Ver.2004.09.29
大学 改革は今・・
「国立大学法人
がスタートして」
( 国立大学法人の研究 PartU ・・一般論と会計特論 )
04年4月、国立大学が法人となりスター
トした今、何を考え何をしなければなら ないのか。
麻紀子・・・ 「国立大学法人」が発足して半年たったけれど、いまも、「国立でなくなった」、「民営化された」、「株式会社になった」と
いろんなことを
いってる人が
いるよ。
順
一郎・・・ まだ、よくわかっていないようだね。 PartT でも言ったが、「法人化」=「民営化」なら、県や市町村の地方自治体も
民営になってしまう。
国大の法人化は、国の行政機関、国家行政組織法と国立学校設置法で設置される文部科学省の一
部局、
お役所そのものの大学、つまり行政機関から切り離され、 欧米並みに法人格を持つ、
国立大学法人法で設置される国の組織になった。教育・研究といった公的サービスを
提供する国立の組織であるには間違いない。「国が設置する国立大学の設置形態を変更した」のであって、
「国
立でなくなった」 「民営化した」などは全くの間違い。
ましてや、利益追求を
目的とする「株式会社」になるわけがないじゃないか。まぁ、株式会社形式の大学も2月に認可されたからね。
構造改革特区でのデジタルハリウッド大学院大学とLEC東京リーガルマインド大学の2校がそれだけど。
麻紀子・・・ それに、「独立行政法人」になったという人も相変わらず多いね。
順
一郎・・・
「独立行政法人、独法」になったのではない。 「独法化した」というのなら、「広義の独立行政法人になった」と
いう
意味ではまちがいではないが。国立大学法人(国大法人)は、独立行政法人の制度を下敷きにし、通則法などもそのまま適用されて
いるからね。しかし国大法人は大学の特性
を入れて、独立行政法人とは最終的には違った制度設計となっているのだから、
大学関係者ならきちんと「国
立大学法人」と言おう。
麻紀子・・・ 「国から独立し
た」という言い方も多いね。
順一郎・・・ 独立行政法人からイメージするのだろうけれど、「行政機関、文部科学省から法律的に分離・独立した」というのなら間違いではない。しかし国
から独
立したわけではない。法律で設置され、運営費交付金は国から交付される国立の組織なのだから。
麻紀子・・・ なんだか、法人化してもあまり変わらないという人もいるね。
順一郎・・・ 実は、ここが
大事なところだ。国の行政機関から切り離されたことになったけれど、各大学とも手探り状態で、とにかく法人化だということでソフトランディングしたところ
がほとんど全てじゃないか。人事や会計制度が変
わるなど、そういった担当部局は大変なんだが、そうでない部局はまだ見えてきてい
ないのかな。しかし、これからの「評価」では大変な仕事ができてくる。 「余り変わらない」のではなく、「変わらないといけない部分」がある。
麻紀子・・・ 変わらないといけない部分って?
順一郎・・・ それは、
教
職員の意識だろう。
それに、法人化はこれからが始まり。
中期目標の確認が必要。年度や中期の評価は、そのときになってでは手遅れ。常
に評価を意識し仕事をする必要がある。
体制を替えた大学も、果たしてそれでいいのか組織のチューニングアップをすること
が必要。
天野 郁夫 国立大学財務・経営センター教授(教育社会学) (2004.09.25 朝日新聞)
◆国立大学法人 経営の自由確保へ連帯を
国立大学が法人化されて半年になる。国の組織
から切り離され、予算と人事を大学が自由に扱えることになった。しかし、移行期にあって、ほとんどの大学が学内組織を動かすのに精いっばいで、表立った変
化は現れていない。
予
算の組み方自体も基本的に今年度は前年度と同じ枠組みを残しており、年度末までは様子見の期間になるだろう。ただ、多くの大学で、学部や教員など現場レベ
ルに渡る教育研究の予算は減額されているようだ。法人化への移行に伴う経費や、特定の活動につぎ込む活性化経費、予想外の出費に備える予備費など、管理・
運営する本部側の経費や留め置き分が増えているからである。
いまは手探り状態で進んでいるが、年度末までの実際の予算の執行状態によっては、従来通りの慣行で動いている現場の組織と、本部との間で摩擦が起き、法
人化の問題点が表面化してくる可能性がある。
いずれにせよ、新しい枠組みの予算編成やその執行によって、変化が目に見えて現れるのは05年度以降になるだろう。そして、その変化のもと
で新しい大学法人が順調に運営されていくかどうかは、発足1年間のスケジュールの間に、新しい内部組織を動
かしていく構成員の意識変革がどこまで進むかにかかっている。
規制緩和が進み、認証評価制度も始まって、国と大学全体の関係は大きく変わっている。とりわけ護送船団方式で国立大学を庇護してきた文部科学省との関係
は一変したはずである。ところが、国立大学、文科省ともに従来の意識を変えられずにいる。
これから大学側と文科省の間で重要になるのは「中間的な組織」の役割だ。
法人化にあたってモデル視された英国では、大学と政府との間に多様な中間的・媒介的な機関がある。それらは、政府が直接大学に介入するのを妨げる緩衝材の
役割や、大学側の要望の受け皿としての機能もある。わが国の場合、国立大学法人評価委員会、大学評価・学位授与機構、国立大学財務・経営センターなどがそ
の役割を期待されるが、重要性を文科省、国立大学の双方が十分に認識しているとはいいがたい。
こうした中間的組織が機能しなければ国立大学法人は文科省の顔色ばかりうかがうことになりかねない。
もう一つの重要な媒介的な組織は、国立大学協会だ。法人化された国立大学は、これまで以上に予算を通じて文科省と個別に向き合うことになるが個々の大学を
超えた国立大学全体の意思や課題を、文科省に伝えて交渉する必要性と、そのための「横の連帯感」の強化の重要性を意味する。
国立大学協会は社団法人に衣替えして機能強化をはかっているが、新しい状況のなかでどのような役割をはたしていくのかまだ見えていない。教職員の研修シス
テムの整備などいくつかの事案が具体化しているようだが、集団としての大学自治を主張する場として積極的な役割をはたすべきだろう。
法人化の目的は「教育研究の活性化」にあると言われてきた。そのために、初めて国立大学に「経営の自由」が認められた。
この1年の間に、文科省の認めた経営の自由が、本当に
その名に値するものなのか、また大学は経営の自由をどこまで使いこなす能力をもっているのかが明らかになってくるだろう。
法人化をめぐって危惧されてきた基礎研究と教育の軽視が杷憂にすぎないのかどうか。経営の自由はそれを問われていることを忘れてはならない。
2 変わる国立大学
「阪大キャッチコピー「描いた未来を迎 えに行く」
◎ 阪大キャッチコピー決定
大阪大のキャッチコピーなどを決める
選考会が30日、大阪府豊中市の同大豊中キャンパスであり、キャッチコピー部
門の大賞(賞金15万円)には、工学部3年、一岡翔太郎さん(21)の「描いた未来を迎えにいく」が選ばれた。
賞金総額100万円
で、論文と
キャッチコピーの両部門に82件の応募があった。この日は1次選考を通過しに翰文6件、キャッチコ
ピー10件を審査。最優秀作品賞には、経済学部 今
村美奈子さんの論文「人材をあなたのひとこ変える−」が輝 審査に加わった学長は「力作が多く、どの学生の作品も捨てがたいと思った。学生の熱意を受け止
めていきたい」と語った。
従来の大学と国立大学法人の違い
|
国 立 大 |
国立大学法人 |
私 立 大 |
学 長 |
学内の人間で選考し |
外部の人間を交えて学内で選考し、国が任命 |
独自に決め、国に届け出 |
資 金 |
国が支給 |
運営交付金と授業料などの独自収入 |
国からの補助金と授業料などの独自収入 |
意思決定機関 |
評議会など |
重要事項は役員会が議決 |
学校法人の理事会や大学の評議会など |
授業料 |
全国一律 |
標準額の1割増し以下 |
独自に決定 |
予備校生Y男さん
「授業料も大学によって違ってくるのでしょうか。値上げが心配です」
■
現在の授業料は年52万800円でこれが標準額となる。上限は1割高い57万2880円となる。来年度の授業料はまだ決まっていないが、「学生の負担を考
え標準額にする」(岩手大)大学が多いと見られる。一方、中期計画の達成状況は学識経験者らで作
る「国立大学法人評価委員会」などの第三者機関が評価す る。
野村総合研究所上級コンサルタントの日戸浩之さん
「法
人化後も国立大学の収入の大半は国からの運営交付金が占め、授業料などの学生からの収入は2割もありません。授業料を上げて収入を増やそうと考える大学は
少ないと思います。逆に値下げすれば収入が減るため、標準額より安くする大学はほとんどないでしょう。それよりも、研究や教育面で魅力を高め、学生や研究
費を集めようとする大学が多くなるでしょう」
会社社長K夫さん
「国立大学というと、浮世離れした研究をしている象牙(ぞうげ)の塔っていうイメージがありますね。法人化されると、製品開発へのアドバイスも受けやす
くなるのでしょうか」
埼玉大学副学長 の町田篤彦さん
「現在でも企業と連携して研究活動を行っています。法人化後は企業との共同研究や国のプロジェクトへの応募などで外部の資金を導入することがより重要に
なるでしょう。大学内の技術を紹介したり、企業の需要を学内に伝えたりする努力も必要だと思います」
■ 法人化後は教員も国家公務員でなくなるた
め、企業に役員として参加することが可能になる。一方で、国立大学法人には、授業料や企業からの研究費などに加えて、長期の借り入れや債券の発行で独自に
資金を調達する道も開ける。
一橋大学の石 弘光学長
「海外留学が珍しくないことでも
わかるように、今は大学といえども国際競争の時代です。旧態依然の護送船団方式の下では、日本の大学は競争力を失ってしまいます。学生の就職も売り手市場
ではありません。大学が優れた学生を育て、送り出すことが大切です。18歳人口も減っていきます。休講が喜ばれるようなレジャーランド化した大学では生き
残れません。法人化は研究や教育の充実の刺激剤になりますし、大学経営の専門家も出てくるのではないでしょうか」
3 変わる文部科学省
文部科学省高等教育局内に国立大学法人支援課が設置され、国
立大学法人からの相談窓口は、原則、この国立大学法人支援課でということになった。
本省から国立大学法人に対して、これまでの様な細か
い指導通知は出さないことになった。
(こうしなさい、ああしなさい、これはダメです、こういう手続きをしなさい、いつまでに○○を提出しなさい、といったことは行わない)
文部科学省主任大学改革官の山下和茂さん
「法人化は大学の独自性を高め、優れた教育や研究を行いやすくすることが目的ですら独立行政法人になった国立の博物館や美術館では国が館長や目
標などを決めるのに対し、大学法人は自由な発想や研究が重要な『学問の府』であることを重視して大学の意見を反映しやすくしています。中期目標は最終的に
は文部科学省が決めますが、ほかの大学と重複する大きな実験施設の設置を削って無駄を省くといった点を除けば、基本的には大学の出す案を尊重します」
国立大学法人法は、学問の自由や 大学の自治にどのような配慮をしているのか
憲法23条によって補償されている学問の自由、大学の自治について、
@
学長の任免は国立大学法人等の申し出に基づいて行う。
A
中期目標の策定に当たっては、国立大学法人の意見に配慮する
B
全学的な教育課程の方針等は教員の代表者で構成される教育研究
評議会で審議する
等を規定し、教育研究に対する大学の自主性を尊重した内容としている。
しかし、運営組織については、私立学校のように法人組織と学校とを分離する組
織形態では
なく、
@
1 法人1大学と規定していること
A
学長を法人の長としていること(学長とは別に理事長を置かな
い)
B
経営協議会及び教育研究評議会の双方を国立大学法人の審議機関
として規定していること、
等の規定により、学長のもとに国立大学法人と国立大学が一体的に運営されるようにしてい
る。
麻紀子・・・大学の評価、これは大事な問題になるよ
ね。中期目標終了後は評価によっては「ト
ドメを刺す」と言われるけど、これはどうい
うことになるの?評価で「この大学はもう要らない」・・・と言われるの?
順一郎・・・ 一年経って、さあ評価しようと言ったって、評価できるものではない。
中期目標期間終了時に総務省の評価委員会
による国立大学の事務事業に対する改廃
勧告を行うことになっている。これは、中期目標に記載される主要な事務事
業程度のものを対象とすることで、大学そのものや学部の改廃といったものは含まれないと考えられている(平成15年7月参議院文教科学委員会)。だから、
「この中期目標のこの事業は不適当だ。」となっても、評価で「この大学はもういらない」ということにはならない。法人国立大学を廃止するのは、
あくまでも国会での審議によって国立大学法人法を改正し廃止するしかない。
福井大、年度計
画の進行管理システムを構築
福井大学は、年度計画達成に係る進行管理と進捗状況の把捏のため、進行管理
システムを構築した。
このシステムは、企画課と評価課の合同作業により学内独自で開発したもので、事務用電子
掲示板上に、年度計画一項目につき一ページの「進捗状況報告書」を各担当課ごとに表示し、毎月の進捗状況を各担当課が画面上で作成していくもの。
順一郎・・・ 一年経って、さあ評価しようと
言ったって、評価できるものではない。
河村建夫文部科学相は十七日、今年度からすべての国公私立大学に第三者評価が義務付けられたことに伴い、財団法人大学基準協会(会長、清成忠男・法政大学
総長)が評価機関としてふさわしいかどうか判断してもらうため、中央教育審議会に諮問した。中教審は早ければ七月に答申、文科相が認証する。第三者評価機
関の認証についての諮問は同協会が初めて。
大学基準協会は一九四七年の設立。会員制で大学評価には実績があり、正会員は国立四十一、公立二十三、私立二百四十三の計三百七大学。認証後、同協会は改
めて会員として加盟を認めるかどうか判定し、その後、最初の評価を五年後に実施。ニ回目以降は七年ごとに行う。結果はホームページなどで公表する。
合格率「医師95%」「司法 70%」・・・
国立大の半数、数値目標 中期計画固
まる
法人化した89
の国立大学(二つの短大を含む)がこの先6年間の運営指針とする中期目標・中期計画が固まり、11日、文部科学省から公表された。各校の大学づくりの「マ
ニフェスト」ともいえるもので、業績を評価する基準にもなる。昨年10月に公表された素案には具体的な目標が少なかったが、各校の修正の結果、何らかの
「数値目標」を44校が、「達成時期」を43校が盛り込んだ。
「95%以上を目指
す」。滋賛医
科大は医師国家試験の合格率の数値目標を示した。横浜国立大は法科大学院の学生の司法試験合格
率の目標を70%程度にすえた。具体的な数値は、各校の意気込みや覚悟の指標となる。
ほとんどの大学は学年教育の充実を掲
げた。
評価の基準や方法をはっきりさせて成績
管却を厳しくする大学が日立つ。筑波大の「筑源スタンダード」など、複数の大学が学生に求める学力の水準を設定する。
研究面では、重点テーマを掲げて大学
全体での取り組みを目指す傾向が強い。琉球大の「トロピカルバイオサイエンス」研究は、地域性を重視した特色づくりの一つだ。
石川県や金沢市と協力し て「日本文体
験型」の教育プログラムを実施する金沢大学など、「地域との連携」を多くの大学が打ち出した。
一橋大は「有力研究者の特別処遇制度
の導入」を挙げた。山口大は特定の教員を「研究特任教員」「研究主体教員」に選んで優遇する。半面、両者には「高い水準での厳密な評価を行い、結果を公開
することを義務づける」という。
法人化に伴い、学長の惟限を強めたトッ
プダウノ型への態勢見直しも目白押しだ。東京大は、資金の配分や教員200人分の配置を学長の裁量で出来るように
する。北海道大の「役員補佐制度」のように、学長や理事を支える組織をつくる大学もある。
法人の運営は、文科相が中期目標を策定し、中期計画を認可する仕組み。実際には素案を各校が作り、国の国立大学法人評価委員会(野依良治委員長)が求めた
修正を各校が反映させたものが成案となる。評価委員会は、素案段階で多くの大学が「教育や研究になじまない」と明示を避けた数値目標や達成時期を、できる
だけ盛り込むよう求めていた。
11日に開かれた評価
委員会で全
校分が了承されて一連の手続きが終了、文科相が近く策定・認可する。全校分が文科省のホーム ページに掲載される。
■具体的な目標の例■■■
≪数値目標≫
・教育系卒業生の教員就職率を2009
年度までに60%に(束京学芸大)
・全授業の2分の1以上
を公開授業
として地域住民に提供(高岡短大)
・特許取得を04年度は
25件、6
年間のうちに倍増(静岡大)
・地域との多様な連携を6年間に
60件以上実施(東京農工大)
≪達成時期≫
・04年度から卒業生の大学に対す
る評価や卒業生に対する社会の評価を継続的に実施(秋田大)
・05年産までに全教員
の個人評価
を試行し、06年度から実施(名古屋工業大)
・大学院で05年度から
学生の表彰
制度を導入(北見工業大)
評価
国立大学が法人化されて一カ月が経っ
た。私も文部科学教官から国立大学法人の教員になった。大学がどう変わるのかは検証される
べき大問題だが、少なくとも大学教員が評価にさらされる時代がやってくる。
もともと大学教員と評価が無縁だった
わけではない。大学の新設・改組時には、大学設置審議会による評価があったし、就職や昇進
時にも業績審査がある。科学研究費も審査に基づく競争的配分だ。
だが今始まろうとしている評価の時代
は従来とは違う。第一に評価が全員に対し恒常的に行われ、第二に人事考課と連動して給与査
定や研究費配分に使われる可能性が高い。そのため第
外から見れば当然のことがようやく始
まったど思われるだろうが、話は簡単篭ではない。研究
教員も、費やした公金に見合う成果を
上げたのかを点検・説明する義務が為る。確かにそうなのだが十教育の質、研究生産性、社会貢献
度を向上させるための評価方法は」朝一夕には開発できないし、評価だけ.で可能なこと
でもないりしばらくは模索が続く。
(お茶の水女子大学教授 耳壕 寛明) 5月1日日経朝刊
国立大学 社 説 (読売 5月13日朝刊)
中期目標・計画の修正も必要だ
スタートで早くも、差がついたようで
ある。
四月から法人化した全国の国立大学八
十九校の中期目標・計画案が国立大学法人評価委員会で了承された。
昨秋、各大学が提出した素案は「具体
性に欠ける」と評価委員会の批判を受けた。了承された計画案は、新たに三十七大学が数値目標、三十二大学が達成期限を明示している。
学生に求める学力水準の設定、地域に
密着した教育プログラムの創設、科学研究費や特許の申請、出願日積数の明示など、内容は多岐にわたる。
教育、研究面の目標を達成するため、
全教真の個人評価、学長裁量による教員配置、有力研究者の特別処遇などを打ち出した大学もある。
目指す大学像と、そこに至る道筋がか
なり明確に示された。
中期目棲・計画は、各大学が今後六年
間に実行する改革の青写真であると同時に、社会に対する公約でもある。目標、計画の達成に全力をあげてほしい。
問題は、数値目標、達成時期を明示で
きなかった大学だ。そうした大学は計画の内容自体も総花的、抽象的で、改革の方向性を煮詰めていないことが多い。
具体的な目標、計画を掲げると、到達
できなかった時に、マイナスの業績評価を受ける。それを恐れたためと見られるケースも少なくない。
目標、計画をあいまいに、あるいは低
く設定したから評価が有利になる、とは限らない。評価システムの検討はこれからだが、世界的な基準に基づく到達度評価、各大学を比較する相対評価の要素が
入ることも考えられる。
大学の運営面の評価は毎年、実施され
る。各大学への毎年の運営費交付金も、来年度以降、先端的な教育、研究計画を重視することが、文部科学省、財務省の間で合意されでいる。
「業績評価は六年後」と、のんびり構
えている暇はない。明確なゴールを設定しないままでは、結局、自分で自分の首を絞めることになる。
国立大学は確実に変わりつつあるが、
前例踏襲の思考を抜け切っていない。
各大学の役員報酬秦について、評価委
員会では、「外国人の大学経営のプロをスカウトするといった発想に欠ける」と厳しい批判があった。
あいまいな青写真しか描けなかった大
学は、発想の根本に「守り」の姿勢がなかったかどうかを見直し、計画の修正案提出も視野に入れるべきである。そうでないとスタート時についた大学間の差
は、ますます広がっていく。
■■■ 京都 論考(5月14日朝刊)
国立大の法人化に歩調を合わせ、大学
の「評価」が始まった。
大学評価学会事務局長の重本直利龍谷大
数授にその課題を論じてもらった。
◇ ◇
現
代は「評価の時代」といわれる。大学もその枠外ではなくなった。今年四月一日から文部科学大臣によって認証された第三者評価機関による大学評価が法的に義
務づけられた。これに対応すべく各大学・大学人はあらたな体制・姿勢をとることを迫られている。言うまでもなく、大学評価は教育・研究のあり様に直結す
る。また、「学問の自由」、それに基礎づけられた「大学の自治」の根幹にもかかわる。
遡
ればこの法制度の成立は一九九八年十月の大学等議会答申を起点とする。答申は経済的視点を過度に強調した内容となっている。今後この経済的視点が評価の中
心となることが危慎される。あらためて学問と大学の現代的あり様の議論が求められている。評価の成否は二十一世紀の大学の帰趨を決するばかりか初等・中等
教育全般への影響も不可避である。
現在、この評価は、文部科学大臣、文部科学省内の国立大学法人評価委員会、そして大学評価・学位授与機構(独立行政法人)のラインを基軸として進められよ
うとしている。国家・行政からの独立性の点では国際的にみて驚くべき内容であると言わざるをえない。ユネスコ二十一世紀高等教育宣言(1九九八年十月採
択)は、評価に関して、まず「高等教育の質は多元的な概念である」ことを強調している。その上で、自己評価と外部評価は独立した専門家でかつ開かれたもの
でなければならないと述べ、さらに国家・行政からの独立性を求めている。現行の日本の評価システムはこうした国際基準から逸脱している。
他
方、これまで狭い専門の領域に閉じこもりがちであった個々の大学人に大きな課題が提起されている。自らの教育・研究から大学経営全体のあり様、その社会
的、歴史的、国際的、市民的視点などが大学人に厳しく問われている。それは、教育・研究の異分野間相互のかかわり、またそれらの大学経営という視点からの
検討である。大学の社会的役割もこれまで以上に問われてくる。今後も大学および大学人が「学問の自由」と「大学の自治」の現実的・具体的担い手となるに
は、こうした大学評価に関する試論は避けられない。
遅きに失した感が否めないが、三月二
十八日、大学のまち京都で設立した大学評価学会 (発起人百四十三名)はこの場の確保である。設立大会では「大学評価京都宣言」を採択した。
特に、学生の発達保障、経済的のみなら
ず多元的な側面、例えば民主主義・平和、人権・ジェンダー、、環境問題、貧困問題などといった国 内外で直面する諸課題も含めての評価研究が求められる。
また、国際人権規約およびユネスコなどの諸文書で示されている国際基準に基づく大学評価、特に一九六六年に国連で採択された国際人権規約の「高等教育の漸
進的無償化」とはほど遠い世界一の高学費問題は緊急の課題である。さらに、今後、生まれる認証評価機関と外部評価機関の評価のあり様を研究することも求め
られている。
大学評価は一国の経済性のみならず国
際性・社会性をもった多様で多元的な視点から行われるペきである。このためには大学関係者のみな らす広く市民の参加が欠かせない。
大学評価は大学および全大学人の「生
死」にかかわる課題であるとともに二十一世妃の日本社会の進路を決する国民的課題でもある。
京都 5月14日朝
個性生きる評価確立を
四月から法人化した国立大の今後六年
間の指針「中期目標・中期計画」が出そろった。
文部科学省の評価委員会が各大学の原
案をすでに了承、正式な目標・計画として認可される。
国立大は明治以来、国が管轄する機関
であったため、人材活用や組織の活性化などで柔軟性に欠けるという批判があった。四月の法人化で国から独立した組織となり、大きな転換期を迎えている。
法人化で学長権限が強化されるなど大
学独自の権限や責任が拡大してリーダーシップ発捧による自律運営が可能になる。その一方で競争原理や成果主義が導入された。
管理運営には学外の企業経営者らも加
わって「開かれた大学」を目指す。京都大経営協議会の学外メンバーには、旧国鉄民営化の推進役だっ七 井手正敏・JR
西日本相談役や経済同友会の北城略太郎代表幹事らが加わっている。
授業料もある程度自由に決めることが
できる。細かく国によって規制されていた交付金は一括支給されて使途は各校の判断で決められるようになった。
中期目標・計画は法人化した大学が行
う今後六年間の「公約」といえるものだ。評価委員会が定期的に達成度を評価する。その結果の良否は交付金の配分に反映する。達成度が低く、評価されなけれ
ば交付金は減ることになる。
各校は学生教育の充実や学生による授
業評価の導入、地域との連携などを打ち出した。「医師国家試験で95%以上の合格率」 (滋賀医科大)など、ほぼ
半数が数値目標や達成時期を盛り込んだ。有力研究者の特別処遇制度を導入する大学もあり待遇も横並びでなくなる。
数値目標は各校が課題に取り組む積極
姿勢を示し、達成度のチェックも容易だ。特色ある制度は少子化のなかで競争に勝つ手段でもあろう。
しかしながら、それだけでは大学の評価
は十分といえない。
大学は長い視点で考えなくてはならな
い基礎研究を行う社会的使命を負っている。民間企業の方式をそのまま当てはめるのは難しい面があろう。教育成果の客観的な評価も難題だ。六年という短期間
の目標・計画だけで可能とは思えない。
いまのところ評価委員会が、具体的にどう評価しようとしているのかは見えない。どのように公正さを保つのか。評価によってはこれまで通りの国の関与が色濃
く残る懸念も強い。各校とも疑念を持っているのが実情だろう。それぞれの個性と自律性が保証される多元的で柔軟な評価制度空所す必要がある。
達成度評価による交付金変動の幅も見え
ない。財務省は財政難と法人化を理由に交付金の削減を行う方針だが、効率化の追求だけでは日本の未来を開く研究の芽を摘まないか。納得できる基準も求めら
れよう。
1 数値目標を掲げていない目標の達成度
は、何をもって「達成」や「ほぼ達成」なのか基準が不明。
1 達成度の評価が「ほぼ達成」に集中して
いる。評価結果が正規分布のように散らばるようにすべきではないか。
2 まず、高い目標を掲げ、それを達成できなかった理由を明らかにし、それを次の目標に向 けて活用することに評価の意義がある。
3 数値目標を掲げることが重要。数値目標
でないものは何らかの具体的な判断基準が必要。
4 自己評価も大事だが、外部評価も必要。
現在は自己評価の仕組みだが、政策評価室で外部に評価を依頼することも検討してはどうか。外部に評価の人材を育成することにもなる。
5 利用者満足度のような数値目標を設定
し、外部の意見を採り入れながら評価している点は好ましい。
6 りそな銀行を巡る動き等があるなかで、金融シ
ステムの安定確保について「ほぼ達成」と言えるのか。
7 国債の追加発行等の状況のなかで、必要
な歳入の確保について「進展があった」と言えるのか。
8 国有財産の売却件数の増加を取り上げ
ているが、歳入確保の観点から、件数だけでなく金額でも評価すべきではないか。
9 国際交流について、研修生がその後母国
でどれだけ活躍しているかを何らかの形で評価できないか。
10 達成度の評価について、ほとんどが
「ほぼ達成」とされているが、一般の国民が見て納得できるとは思えず、全体として評価が甘いのではないか。
11 達成度の評価については、単に達成度を
示すだけではなく、具体的に何を達成したのか、あるいは何を達成できなかったのかを明確に記述すべきではないか。
12 達成度の評価にあたり、外部要因によっ
て達成度が低下した場合には、具体的にどのような外部要因によって達成度が低下したかを明らかにすべきではないか。
13 評価書のポイントが分かりづらい。概
観、見取図が必要。
14 言葉で評価する場合、なぜ「おおむ
ね」、「ほぼ」なのか分かりづらい。
15 財務省のどのような組織が目標と関
わっているのか、分かりやすく説明して欲しい。
16 評価結果を見ると「ほぼ達成」が大半を
占めている。説明では、去年と変わらない事項については評価を変えることはできないということだが、それならば評価を行う必要がない。毎年新たな目で見直
すべき。
6 会計論点
独立行政法人・国立大学法人会計
国立大学法人の会計基準は企業会計法を取り入れたことになっている
が、大
変読みづらい。最大の理由は、国の会計基準との整合性をとったからである。何
となく、何の法人化かと疑いたくなるような国あるいは財務省の方針を感じる。
設立時の資産の処理
国の会計法と の整合性をとるために、あと、資産処理と退職金引当金も影響を
受ける。資産については、設立時に国から移管を受けた場合と、その後、運営
費交付金で購入する場合に二つの場合についての考慮が必要である。
まず、移管の
際、土地、建物については、国有財産のままとするために、国が現物出資する、つまり国の出した法人の資本金であるという取り扱いをする。
これは理解しやすい概念である。また建物のように減価償却の起きるものにつ いては、企業型の考えでは減価償却なる費用が発生したこととする。
しかし、ここ
でも、会計法のしばりから、国有財産を特別扱いとするので、その償却分は別名の負の資本、損益外減価償却累計額として記載する。
国有財産は、
資本の目減りということで処理し、実質、減価償却を費用化させないのである。
資産除去時 に、どのように処理するかは、私の調べた限り明記されていない。
例えば建物が老朽化し、壊す時に、その残存額分をどう扱うかである。明かに
資産と減価償却累計額は除去時に消失しなければいけない。損益外減価償却累 計額も消失すべきであろう。そうすると、この表から分るように、移管額分の
不平衡が発生する。これを平衡化するには、移管額分の資本金減を行なうのが
一つの方法である。元々、現物出資という概念には、現物が無くなった時点で、 出資も無くなるという考えである。
資本の減資が あるというのは頂けないという場合には、除去時に資本剰余金で
受ける方法もある。この場合、資本剰余金に余裕がないと、負になってしまう
問題がある。
なお、建物に ついては、従来通り、国がその維持に努めることになっているよ
うなので、引き続き、現物出資はなされることになる。
その他の資産 で非償却なものについては、国は法人に譲与し、国有財産から外
す。したがって、資産相当額の収益が発生し、最終的に資本剰余金になる。表 12.5: 非国有非償却資産(企業型でも法人型でも同じ)却する資産
については、企業型では、設立時に資産の受贈があったとし、次 のように仕訳する。売却した場合には、最後の一行が追加となる。
償却する資産 については、企業型では、設立時に資産の受贈があったとし、次
のように仕訳する。売却した場合には、最後の一行が追加となる。
かし、
法人
型では、相変わらず会計法との整合が顔を出す。廃棄するまで国 から借用しているという立場をとるのである。運営費交付金と同様の扱いであ
る。そこで、設立時にはそれを固定負債と看倣し、償却が起きると通常の償却
処理に加え、その時点で寄付を受けたとし、その額の負債減が起きるものとする。
つま
り、この
場合にも、!減価償却と同額の !資産見返物品受贈額戻入が計上
されるため、減価償却を費用としないような補正が加わっている。除去時には 通常の資産除去の仕訳に加え、残る寄付をすべて受けたこととする。
「資産見返物
品受領額」を「!物品受贈益」と看倣すことにより、設立 時の仕
訳を企業型にすることができる。また、償却時の第2 行および除去時の第 3行 を消去するを消去するために、「!資産見返物品受領額戻入」も「!資
産見返物 品受領額戻入」も「!物品受贈益」に看倣すのがよい。
なお、この作
業をすべての資産について行なうのは大変であるので、50万円以
下のものについては、条件があるものの、消耗品として扱ってもよいことになっ ている。つまり、無償の譲与である。通常は次のように仕訳する。
運転時
の資産の処理
資産の取り扱いの面倒さは、設立時のみではな い。運転時に取得した資産でも
同じである。企業型では、運転時に所得した資産は次のように扱う。
しかし、運営費交付金で資産を購入す
ると、先
に運営費交付金の節で述べたよ うに、運営費交付金債務の減額を伴なう。
「運営費交付金債務」を「!運営費交付金
収益」と読み換えると第2行は消去さ れ、通常の企業型の資産取得と同じ形となる。
減価償却する資産の購入の場合には、企
業型で は次のように扱う。
しかし、法人型では、資産そのものを国から
の
負債とする処理をするため、運営費交付金収益で受けず、資産見返運営費交付金と言うまた新しい固定負債科目で受け、かつ、償却時に収益化する。つまり、負
債化し、償却ごとに収益化する。
これも減価償却の
費用を相殺する収益が入って
いるために、減価償却の費用化 ができない。また、資産除去で完全に収益化が完了する。
企業型にす
るに
は、すでに「運営費交付金債 務」を「!運営費交付金収益」と
読み換えることにしているので、取得時の第 2行、償却時の第 2行、および除 去時の第
3行を消去するために、「資産見返運営費交付金」、「!資産見返運 営費交付金戻入」を「!運営費交付金収益」と読み換える必要がある。
一件、!運営費交付金収益がおかしくなり
そうに見える が、運営費交付金収益
は必ず左右で相殺するので、この仕訳では変化がない。元々、企業型では、運
営費交付金は年度当初に収益化されるだけで、期中の収益化を考えてはいなかったので、これでよいのである。
素朴な運営がな
されてきたのが実状。
システマ
チックな運営できていない
マネジメント・スタッフと事務職員の力量向上
法人化の前提となっている自主的・自律的かつ自己責任に基づく大学運営を実現する
ためには、学長・理事を始めとするトップ・マネジメントと現場の教育・研究・医療を支える事務職員の資質を高めることが絶対条件である。
事務職員に関しては、これまで監査法人や専門家の支援を受けながら、法人化の意義や法人化後の財務などについての研修を行ってきた。しかし、理事に関して
は一部が国立学校財務センターの主催した、マネジメント・セミナー(2日間)に参加した程度であり、それも法人化準備に関する情報交換や文部科学省による
説明を聞くのが中心であった。しかし、財務にしろ施設マネジメントにしろ人事・労務、情報セキュリティ、病院経営にしろ責任の伴う仕事をしていくために
は、相当専門的な知識が必要である。
事務職員にしても、それぞれのレベルで従来とは異なった知識が求められる場合が多い。4月1日から新たに社団法人としてスタートする国立大学協会では、学
長、理事、事務局長などのトップ・マネジメントを対象にした研修事業を行うことにしている。協会の全国8つの支部(近畿ブロックもそのうちの一つ)では、
ブロックの実情に応じて必要な事業を行うことになっているが、部課長以下の職員を対象にした実務研修も当然主要な事業になるであろう。
目玉論
目玉の組織ばかり作られていないか。目玉は2つあれば十分。
目玉が10も20もあり、血や肉のない、がりがりに痩せたお化けのような組織に
なっていないか。
リーダー
自分で責任をとること
「権限を最大限部下に与え、自分で
責任をとる。火達磨になる覚悟をする。それが出来なければリーダー失格」
人材のあり
方 財、人材、人在、人罪、人災
板東人事課長
【「部課長の人事については、昨年末に事務局長ヒヤリングを行い、大学の意向や本人の希望を聞いた。
中
には学長からも、いまいる課長はまだしばらくは居てほしいというような話や、このポストは非常に重要視しているので本省からこういう能力を持った人材をお
願いしたい、といった課長級にまで踏み込んだ要講があったものもありました。事務局長にとりまとめて頂く形で、学長のご意向も確認しながらキメ細かい人事
を心がけました。
ー新しく再発足した国立大学協会が人事面でも貢献しているようですが−
国大協からは、『国立大学法人化後の幹部職員の人事交流について』が昨年4月に出ている。
本省経験者と本省経験がないけれども課長登用面接を受けて全国に異動している幹部職員の2つに分けて考えました。本省経験
がない方々については、ご家族を出身大学の付近に残して全国を回っておられるようなケースが多いわけですね。
本人の希望するブロックにできるだけ早い時期に異動して頂き、その後ブロック内で人事交流をしていこうというのが国大協の共通理解の中にありました。
従って、そういう方々については、できるだけ早い異動のチャンスに本人が希望するブロックにということで考えさせて頂きました。勿論、この4月に全てとい
うわけにはいきませんが、その何分の−かは実視できたのではないかと思っていま
−本省経験者についてはどうですか −
「勿論、本省経験の方々についても大学のご意向、ご本人の希望を十分踏まえた上で人事をやりました。これは文部科学省と大学が連携しながら、現在大学に
おられる方々に⊇いて全国レベルで異動を考えていきましょうということで、先ほど申しあげた国大協での共通理解を頂きましたので、それに沿った形での人事
を考えさせて頂きました。先ほどの本省経験のない方々の異動も含めた全体で見ますと、ブロックによっては課長クラスが足りないというところと、帰ってきた
いと言いますか、そこへの異動を希望される方々がかなり多いところとが出てくることになります。勿論、それぞれ大学の中でも学内登用したいというケースも
かなりありました。本省から出させて頂く人材も従来どおりありましたけれども、それだけでは足らないというところもあり、いままで文部科学省がやっていた
課長登用試験を今後はブロックでやることになりました。当該大学だけでは候補者がいない、あるいは課長を希望する者を当該大学だけでは任用できないという
ケースがありますので、ブロックごとでも課長登用を今回実施したわけです。ただ、近畿とか関東甲信越は、戻りたいという方々の数がかなり多いということ
で、大学数の割りには登用が少ないなどブロックによって若干部課長の任用状況が違いますね」
一人事異動の全体規模もハツキリしないわけですね 一
「いまの時点で、文部科学省としては、各大学の人事の全体像を確定的に把握しているわけではありません。先ほど申し上げたように、各大学が内部で昇任させ
たりしているケースがかなりあるものですから把握は難しいですね。こちらは、出たり入ったりというところを把握させて頂いているのですが、大学が発表する
資料をつなぎ合わせて初めて全体像が分かるということになります」
− 大学ごとに組織の改変を実施したところも少なくないようですね−
「各大学が法人化を機会に組織を変えたというケースはかなりあります。幹部
ポストについては、全体でみると若干増えています。これから絞り込むというケースは多いと思うのですが、新しく必要な組織を創られているというケースがあ
ります。部長級でいえば、人事部を設けたところが東大、京大、東北大と3大学あります。労務関係が大学として重要になり難しい仕事ということもあるようで
す。また、人事も、大学としても登用とかブロックの中での人事交流等いろいろ考えていかなくてはならないということでとくに地区の拠点になる大学が世話役
となりながら、人事交流のしくみを作っ
国
立大学法人採用試験
国立大学法
人初の採用試験23日に
全国7地区で3万
8507人
が受験
国立大学法人制度がスタートし、これ
までの人事院国家公務員採用試験に替わる「国立大学法人等職員採用試験」の第一回第一
次試験が五月二十三日、全国七地区で一斉に実施される。すでに事務系を中心に合計三万
八千五百七人が受験を申込み、各地区とも四十倍 前後の狭き門となつている。
各地区の申込み状況は、北海道地区二
千四百六十二人、東北地区三千四百五十七人、関東甲信越地区一万七百人、東海・北陸地
区四千二百十六人、近畿地区六千九百七十九人、中国・四国地区四千五百三十一人、九州
地区六千百六十二人となつている。
国立大学法人は、国が財政的に責任を
持つ独立行政法人の枠組みを基に、自主・自律という大学の特性を加えた新しい法人制
度。各大学では、それぞれの理念により職員を募することになるが、従来、国家公務員採
用試験から採用を行っていた事務系(図書系を含)及び技術系職員については、独自の
国立大学法人等職員採用試験を新たに実施する。
大学共同利用機関、国立高専等の職員採
用もこの採用試験から行われる。
第一次試験の合格発表は六月三十日。
七月上旬には各地区で合同説明会が開かれ、その後、各国立大学法人等での個別業務説明
会、第二次試験、採用という流れ。
文教
速報 5月19日
6601号
人事院制度
から 労働基準法 労働安全衛生法 に
国立大学や国立共
同利用研究所は国立機関で あったため、人事院が定めた人事院規則を主に適用法規とし、その規則に従って運営が行
なわれてきた。しかし、人事院規則は労働安全衛生法などの通常法規と比較して最大の違
いは罰則規定のないところであり、これによって実質的に法律違反状態を取り締まることができない「ザル法」となってし
まっていた。
人事院規則
10−4 と 労働安全衛生法
人事院 罰
則 規定に違反した場合 是正指示
労安法 罰則 規定に違反した者
3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
法人化に対応した
国立大学における労働組合(職員団体)の新たな役割
-基本の徹底 変化への対応−
2003.8
滋教組組織拡大センター/Koike
1,良好な労使関係の確立
■大学改革の推進
・問われる大学ごとの「戦略性」
■リーディングセクターとしての教育労働分野
■新たな公共空間を担う“非公務員型公務労働セクター
ー(NPS)”
★NewPllblicSect¢r
・将来的には数十万人の非公務員型独立行政法人職員が生まれる
・NPO、NGO、そしてNPS(新たな公共性の担い手たち)
一パートナー(当事者)としての労働組合の存在
2,新たなワークルールの創造
■賃金・身分保障・労働条件は法律事項から契約(交渉)事項へ
・国家公務員法、国家公務員総定員法、人事院規則、人事院勧告、教育公務員特例法他
・労働組合法に基づく労働組合による団体交渉、労働協約締結
■人事(雇用)流動性の拡大
・大学の再編・統合、任期制の拡大、年俸制、パート教員、事務組織のアウトソーシング(外注化)、民間参入など
■競争的環境・・・a.雇用形態 b.目標と評価 c.能力・業績賃金体系 ・競争と評価が機能する上で不可欠な“合理性”“公平性’’“透明性
’’性”の確保と運用、ルール作りにおける労働組合の参加と提言
一すべては労使交渉で決まる
3,新しい「大学自治モデル」の形成
■「制度的保障」としての教育公務員特例法からの離脱
・規定された自治から創りだす自治へ…
■大学の果たす多様性の拡大への対応と学問、教育の場としての基本の徹底
一社会に開かれた“我らが世界”を
4,大学別労使関係と大学横断的職能組織の必要性
l
各大学ごとに決める賃金雇用関係
拡大する大学間異動
国立大学連合組織(新国大協)による給与体系、就業規則、人事交流
のモデル作り
・各国立大学法人の枠を超えた交渉関係の確立とワークルール作り
■設置者は国
・運営費交付金(予算)を担保する文部科学省、政府との交渉力
■国立大学法人の賃金、処遇が公私立大学、公立私立学校にも波及する
・教育、公務員分野の労働組合(日教組、自治労、国公総連など160万人)とナショナルセンター連合(800万人)との連携による交渉力のパワーアッ
プ
ー産別組織日教組(日大教)と各大学ユニオンの連携が不可欠
ヒト、モノ、カネ それに情報・・・ リソース(資産) 時 間・・・コスト。会議の仕方などを考える。
新日本と中央青山が76%
あずさ14大学、
トーマツ7大学に
4月1日に発足した
国立大学法人
全89校の会計監査人が、このほど決定した。
各国大とも、新日本監査法人、中央吉山
監査法人、あずさ監査法人、監査法人トーマツの4大監査法人のいずれかを監査人として選定。中でも新日本と中央青
山を選ぶ国大が多く、全体の76%を占めた。
国大法人の会計監査人は、国立大学法
人法に基づき、各国大法人の財政状況などを第三者の立場から監査する。各国大とも、今年になってから監査人の選定に入り、契約先の監査法人を文部科学大臣
に推薦。今月15日に河村建夫文科相の選任を受け、確定した。
監査法人ごとに契約数をみると、新日
本が36大学(40%)でトップ。以下、中央青山が32大学(36%)、
あずさが14大学
(16%)、トー
マツが7大学(8%)となった。
監査法人別の特徴としては、新日本は
東大、京大、北大、阪大、東北大と、旧帝大の7大学のうち5大学などと契約。中央青山は東工大や名工大、浜松医科
大な
どの単科大を中心に、またあずさは神大や大阪外大などの関西地区の大学を中心に契約を獲得している。トーマツは、旧帝大の名大と九大の2大学な
どか
ら選定された。
監査法人契約数 主な国大法人
新日本 36 東大、
京大、北大、阪大、東北大
など
中央青山 32 東工
大、名工大な
ど
あずさ 14 神大、
広大など
トーマツ 7 名大、
九大、三重
大、豊橋技科大、愛媛大、千葉大、奈良女子大、滋賀医大
「財務会計システ
ム」ベンダー別一覧
富士通 名古屋大学、秋田大学、東京医科歯科大学、群馬大学、富山医科薬科大学、名古
屋工業大学、京都工芸繊維大学、山口大学
、徳島大学、熊本大学、鹿屋体育大学 など 34 校
ニッセイコム
(現在プロジェクトとして最も注力しているの
が、大 学・高専等をターゲットした新しい会
計システム。
これは、行政改革による独立法人関連の新しい基準に準拠したもので、中でも国立大学向けの
財務会計システムのシェア(北大、阪大、 九大等の
財務会計システムを既に受注)は、大手メーカーを
しのぐほどで、業界屈指の技術力・存在感を発揮。・・・ニッセイコムホームページより)
北海道大学、岩手大学、御茶ノ水大学、長崎大学 など 16校
NEC 東北大学、弘前大学、山形大学、信州大学、浜松医科大学、鳥取大学、鹿児島大学 な
ど 12校
神田通信機 北海道教育大学、政策研究大学、静岡大学、奈良女子大学 計4校
Oracle 筑波大学、神戸 大学、琉球大学 計 3校
公共システム研究所 東京外国語大学、筑波技術短期大学、東京海洋大学 計 3校
日本システム開発研究所 新潟大学、長岡技術科学大学、奈良教育大学 計 3校
NTTD(LiveAccount) 一橋 大学 北陸先端大学 計 2校
アクセンチュア 東京大学、京都大学 計 2校
ビジネスバンクコンサルティング 東京芸術大学 1校
マチックソフトウエア 九州工業大学 1校
独立行政法人会計
と国立大学法人会計には共通 点が多いので、特に区別を要しな
い多くの場合には、まとめて法人会計と呼ぶこととする。
国の歳入歳出につ
いては、いくつかの規則があ る。そのうちで法人会計と関連す るも のを挙げておこう。
一方で、法人側
は、企業的な利益的概念を取り 入れようとしているので、次のよ うに取 り扱いたい。
これらの矛盾を整
合するために、次のような方 針を採用したようである。しかし、 筆者の不勉強のため、以下の方針の論理的根拠は不明である。
独立行政法人の財
務諸表とは、貸借対照表、損 益計算書、キャッシュフロー計算書 (多くは直接法)
に加え、行政サービス実施コスト計算書からなる。キャッシュフロー計算書については、今迄述べた
ことと大きな違いはないので、説明を省略する。また、退職金引当金については、これを設定するかしないかの基準があるだけなので、必要なところで言及する
に止め、特に節は設けない。
また、官庁向け
に、従来通りの収支決算報告書 が要求される。これは、複式簿記 の読めない官僚のためであろうが、単なる経理作業の増大となるので、早急に整
理して欲しいも のである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
会計検査情報 独法・国大経営に 役立つシステム活用講座ー 予算と財務の相違への対応万全に
公共機関向けERPでは通常のERPシステムに比べ、「予算」機能が追加されているのが一つの特徴である。独立行政法人、国
立大学法人の財務会計システムでERPを利用する場合には、単式・現金主義を基本とした予算会計と、複式・発生主義を基本とし
た複式簿記財務会計(財務会計)を統合して、これら二つの会計を同時に処理しなければならない。
しかし、両会計は目的が違うため、同時に運用するためには違いをどのように処理するかが問題になる。その処理方法の詰めが甘いと開発は行き詰まり、揚げ
句の果てはどちらかのみを動かして業務を行い、月末にもう一方の会計の値を操作して帳尻を合わせるというようなことになる。それは、もはやERPとしては紛い物〃と言え
る。
両会計を同時に運用していくための留意点をいくつか述べる。
予算会計は、予卓される支出を支えるための十分な現金があるかどうかを計ることが主な目的であるため、現金の収受がそのまま収入になる。しかし、予算会
計で収入とされても財務会計ではその現金が自己資本によるものか、他人資本によるものかの識別が必要となる。それによって収入にするか負債にするかを判断
しなければならない。
また予算会計では同じ科目の収入でも、財務会計では条件によって収入になる場合と負債になる場合がある(使途の特定がある寄付金とない寄付金など)。同
様に予算会計の支出も、条件によって単なる支出になる場合と固定資産になる場合がある。さらに予算会計の場合は通常、科目として資産が存在していないこと
が多いため、資産の取得、除売却に関する部分の会計処理には注意が必要となる。
予算会計と財務会計では、収入や支出を認識するタイミングも異なる。例えば交付金などの場合、予算会計は交付を受けた時点で収入とするのが一般的だが、
財務会計では「借方:現金/貸方:交付金債務」として一度計上し、その後「借方:交付金債務/貸方:交付金収入として徐々に収益化していく。
費用計上したものを建設仮勘定で資産化したり、前払金を振り替えて費用化するような場合にも注意が必要になる。
また従来の出納期間では、前年度支出負担行為の支払いは、その申請があった年度に計上を行っていたが、財務会計では支払いが行われる年度に計上すること
になる。このほか予算会計では現金が動いた事実、動くと想定される事実がない限り会計処理が発生しない。そのため減価償却や引当金、税効果、資産の時価評
価による差額計上、月ごとの利息計上などのように現金の移動を伴わないものは、一般的には反映されない。これらは予算関連の決算書には表示されないため、
きちんと識別できるようにすることが必要である。
一つのデータで運用
予算会計と財務会計をERPで
統合すると、ある予算会計取引からどの財務会計データが作成されたか、またある財務会計取引からどのデータが作成されたかをトレースすることが可能にな
る。会計取引を予算と財務の両方の視点から正しく説明できるシステムを導入することは、公共機関が会計上の説明書任を果たしていることを証明する強力な
ツールになる。「一つの真実に対して一つの値を作成」というERPの設計思想は、外部に正しい情報を公開するための非常に大きな強みとなる。
ただ、これまで予算管理しかしていなかった法人がERP導入や複式会計に取り組むためには、従来の業務の棚卸を行い、どの取引時にどのような
データを作るかをきちんと整理する必要がある。ERPは自動的にすべてを処理してくれるわけではなく、あくまで人の判断を必要とする支援ツー
ルなのである。
消費税の申告と特定の区分
麻紀子: 国大法人は、消費税の申告もしないといけないのね。消費税の納付額の計算式は、@課税収入に対する消費税−A課税仕入に対する消費税となると聞いたよ。
順一郎: そう、通常は@>Aになるので、その差額を国に納付するが、@<Aの場合には差額が国から還付される。ところが、補助金、運営費交付金、会費、寄付金等の課税対象外収入を源泉に課税仕入等を行った場合、@=0であるので課税仕入に対する消費税額の還付が常に受けられることになる。
麻
紀子:国大法人などの公益法人、特に国大法人は運営費交付金など全収入のなかで課税対象外収入の占める割合が高いわね。そうすると、そのまま計算すると補
助金等の収入に見合った、消費税の還付が常に受けられることになるわね。そうすると、一般企業と比較して非常に有利になって運営は楽になるわね。
順一郎:一般企業からすればそれは不公平だということになる。そこで、特定収入(課税対象外収入のうち、一定要件を満たすもの)が5%超の場合には、特定収入を源泉とする課税仕入に対する消費税 (B)については@から控除できないこととされている。
つまり、公益法人の場合、納付税額は消費税の納付額=@−(A−B)として求めることになる。
麻紀子:そうすると、国大法人の消費税額の計算では、何が特定収入なのかを理解することが大事なのね。
順一郎: 公益法人では、課税対象外収入を以下の2つに分類する。
1. 特定収入
* 運営費交付金、寄付金、保険金、配当金、損害保証金等の収入
* 資産の譲渡等の対価に該当しない会費収入
(資産の譲渡等の対価に該当するものは課税収入になる)
2. 特定収入以外の収入
* 補助金、交付金等の収入のうち、法令又は交付要綱等により非課税又は課税対象外仕入のためにのみ使用されるものをいう。
例えば、
* 寄付金収入・・・特定収入
* 運営費交付金収入・・・特定収入
* 出版物の対価が会費の名目で徴収されている場合の当該会費収入(例、購読会員)
・・・課税収入
* 交付要綱により人件費の補填に充当する旨定めている補助金収入
・・・特定収入以外の収入
* 交付要綱により土地取得費用に充当する旨定めている補助金収入
・・・特定収入以外の収入
さらに、特定収入は「使途特定の特定収入」と「使途不特定の特定収入」に分類される。
1. 使途特定の特定収入とは、
特定収入のうち、「法令又は交付要綱等」又は「国等が合理的な方法においてその使途を明らかにした文書」により課税仕入のためにのみ使用されるものをいう。
2. 使途不特定の特定収入とは、
特定収入のうち、使途が特定されていないものをいう。
例えば、
* 目的のない奨学寄付金収入・・・使途不特定の特定収入
* 目的のある奨学寄付金収入・・・使途特定の特定収入
* 建物建設のために国から交付を受けた施設費
・・・使途特定の特定収入
* 文部科学省から学会誌出版費用として受けた補助金収入
・・・使途特定の特定収入
* 指定寄付金収入(例、国際会議)
・・・使途特定の特定収入
麻紀子:う〜ん、難しそうね。
順一郎:まぁ、個別の事例で研究するしかないようだね。
┏━┓━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃2┃ 意識の改革を ー考 えなかった大学人ー
┗━┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
法人化で
とまどいが
自分の大学を、自分でどうするのかと考
えなかった。大学の幹部でも同様で、
人財、人
材、人在、人罪、人災、人済
組織には
6種類の「じんざい」がいる
そうです。
人
材の色々
http://www2u.biglobe.ne.jp/~kana_/04iitai/55iitai.htm
「くれない族」、「困ったちゃん」、「指示待ち族」、「月給泥
棒」などでは
だめ。
職場
にとっての財産、人財 になろう。
13 ベンチャー TLO 出資
農工大 TLO
に資本参加
来 年度中 学内VBへ間接出資も
東京農工大学は04年度中に、同大の技術移転機関(TLO)である農工大ティー・エル・オー(東京都小金井市、伊藤伸社長、042-388-7254)に
資本参加する。国立大学は4月の法人化後も企業へ出資できないが、承認TLOには出資できる。農工大の講義・教材コンテンツを扱う学内発ベンチャーに対し
て、農工大TLOを通じて間接的に出資する狙いがあるものとみられる。TLOへの出資は東北大学なども検討しているが、出資第1号は農工大になりそうだ。
農工大TLOは01年10月スタート。経済産業省のマッチングファンドの利用などで当初から黒字を確保、03年3月期は売上高3億5000万円で初めて
配当も行っている。資本金は8000万円と規模が大きく、卒業生や職員など農工大関係者552人が株主という点がほかのTLOと異なる。
TLOへの出資は増資ではなく、個人株主から大学への株式譲渡で行う見通し。農工大TLOの成功要因の一つは大学・TLO・卒業生の結束力なので、無理
に農工大の出資比率を高くすることはないとみられる。資金は法人化後の大学の自助努力で工面する。
私立大では早稲田大学が学内発ベンチャー数社に直接出資するなど例があるが、国立大は法人化後も企業への出資は認められていない。しかし、承認TLOへ
の出資は可能なため、大学がアウトソーシング先に活用できそうな大学発ベンチャーに対して、TLOを通じて間接的に出資することが可能になる。
国立大の大半のTLOは、法人化後も独立のまま、大学と業務提携する形をとる。私立大のように完全な学内組織になると、技術移転の専門職員の人事・処遇
が不適切になったり、発明者である教員の意向が技術の事業性を無視して通されたりする心配があるためだ。TLOへの一部出資はこれらの懸念を抑えつつ、大
学との協力強化が図れる。また、TLOの技術移転は熱心な個人に依存しがちだったが、大学が組織的に関与することで安定化が図れる。
ほかに東北大と東北テクノアーチのように、大学のTLOへの出資は数件が検討されている。しかし、一般に複数大学が参加する地域型TLOや、文科系教員も
抱える総合大学では調整に時間がかかるとみられる。これに対し、農工大は工科系大学とTLOが1対1の関係なので、早期の新モデルへの移行が期待できそう
だ。
だいま先生からTLOの関係についてもお尋ねがございました。
TLOに つきましては、現状におきましても、TLOを持つ大
学、あるいはTLOを 持たない大学、それからTLOが
学内の組織になっている大学、さまざまな形態がございますので、
一律にその関係を決めるというようなこと
ではなくて、要は、知的財産の効率的、効果的な管理、活用という観点から、各大学に
おきまして、知的財産本部、この事業とTLOあるいは共同研究セ
ンター等の組織の連携関係などについて、それぞれの状況に応じて御検討、御工夫をいただくことが重要だろう、こんなふうに考えているところでございます。
○斉藤(鉄)委員 これから大学評
価という時代に入ってきますけれども、各大学が自分のところの研
究者が生み出した知的財産をどう活用しているか、大学がどこまで
努力しているかということもぜひ大学評価の重要な項目になるよう
に御努力をいただきたいと思います。
先ほどの石川局
長の御答弁の中に、この整備事業については、これまでは研究 者個人に帰属していた知的財産権を、これから基本的には大学に帰
属する、機関帰属にしていく、そういう方向性を出すんだという答弁でした。
私は、基本的に
は、生み出された知的財産をシステマチックに、有効に活用し ていくにはそういう方向性が望
ましい、このように思っておりますが、逆に、個人帰属があるから一生懸命、研究者というのはそんなものじゃないかもしれませんが、個人帰属があるから一生
懸命、知的財産という観点からも頑張ってきたという研究者もいようかと思います。どっちみち大学の帰属になるのだったら、特許化ということは考えないで研究しようとか、また
研究そのもののインセンティブも薄れてくるというふうな指摘もあ
りますけれども、機関帰属、大学に帰属するんだということについ
ての、さっき言ったような懸念についてはどのようにお答えになりますでしょうか。
○石川政府参考人 特許の帰属等についてのお尋ねでございますけれども、大学に
おける知的財産の帰属につきましては、昨年三月の第二期の科学技術基本計画、あるいはことし七月の知的財産戦略大綱におきましても、知的財産の有効活用の
ための機関帰属が適切というふうなことが言われております。また、このほど、私どもの文部科学省の方の知的財産ワーキング・グループにおきましても同様の
方向が確認されたところでございます。
知的財産を原則
機関帰属といたしますということにつきまして、そして組織的
に取り扱うということにいたします点につきましては、いろいろな意味合いといいますか意義がある
わけでございまして、例えば、大学の
さまざまな知的財産の一元的な管理、活用といったようなものが図られるとか、あるいは企業等との交渉の一元化、円滑化、こういったものが図られるとか、こ
ういった事柄によりまして、これまで個人帰属のもとでややもすれば死蔵されてきたような知的財産が有効に活用される、そして大学の研究成果の産業界への移転が一層促進されるというふうに私ども考えてござい
ます。
また、先ほど先
生が御懸念の、研究者個人の、どちらかといいましょうか、インセンティブの
ような、こういった面につきましても、その成果あるいはその利益
の還元というようなことは、それぞれこういった仕組みの中でも維持できるものと考えておりますし、機関帰属にするようなことに伴いまして、大学が組織として扱うということになりますと、それに伴いまして研究者個人のさま
ざまな負担も軽減されるというふうに考えておりまして、こういった方向がむしろ研究者個人の研究活動にも大いにプラスになるのではないか、こんなふうに考
えているところでございます。
はしがき
国立大学の法人化が、平
成16年4月に迫ってきた。法案は来年の
通常国会に提出される予定である。一方で、大学の構造改革政策として、ロースクール等の専 門大学院の設置や国立大学の統合・再編が推進されようとしている。戦後直後に
行われた学制改革以来の規模とインパクトを持つ改革が、国立大学に訪れようと している。本稿は、これから本格化するであろう各大学での法人化に向けての制度設計作業
に当たって、作業を担当する実務家が留意すべき点を示すこ
とを目的 とする。
平成8年11月から始まった中央省庁再編のための行政改革会議においても、国立大学の独立行政法人化
がアジェンダに上るや、文部科学省は強い反対の論陣を 張り、問題は先送りされた。しかし、産業の国際競争力の低下による産学連携の
必要性の増大や大学における専門的教育の質に対する疑念が、産業界や政界に高 まる一方であることを背景に、文部科学省は国立大学に対して改革は不可避であ
ることを説き続けてきていた。最終的には、小泉政権が誕生し、総理の政府事業 民営化等を核とする構造改革方針は揺るぎないものであると認識したことによっ
て、文部科学省は大きな方針転換を図る。平成13年6月に打ち出されたいわゆ る「遠山プラン」である。「遠山プラン」=「国立大学の構造改革」は、3つの要素で構成されている。第1に国立大学法人への早期移行、 第2に 国立大学の再 編・統合、第3に競争的環境の強化である。
その発表以降、文部科学省は国立大学側に対して、予算配分や機
構定員に関する権限を駆使しながら、遠山プランに沿った改革を進めるよう、強力に指導し始め た。最も大きな問題になるだろうと思われた教職員の身分も、総合規制改革会議
などの場で非公務員型が基本という相場観が形成され、国立大学の教員の中にも それに呼応する声があったことから、非公務員に決定した。しかし、行政改革会
議から数えて遠山プランまで5年、実際法人化される時期を考えれば、実に8年 の歳月が経過することになる。日本の経済社会の発展に大きな影響をもつ大学改革がここま
で遅れたことで、中国を中心とする新興アジア諸国の大学との競争に も後れをとったのではないかという指摘も出ている(注2)。
筆者は、第二期科学技術基本計画の策定や工業技術院研究所の独
立行政法人化の実務に携わった経験から、研究組織としての大学改革に関心をもち、大学のマネージメント変
革について提言したことがある(注3) が、その趣旨は、文部科学省が有していた資源配分権限などの高等教育法制上の権限のほぼ
全てが、独立行政法人化によって国立大学に委譲されることを契機 に、国立大学が自己
統治の仕組みを整備し、競争的なマネージメント手法を取り入れて、グローバルな競争を意識しなが ら、教育研究能力の向上を目指すべきで あるというものであった。その意味からは、今回の遠山プランに基づく大学の構
造改革自体は歓迎すべきものと評価しなければならない。しかし、実際の改革プ ロセスに携わる実務家としては、理念どおりに事は進まないことに注意すべきで
ある。今後各大学と文部科学省の間で進められていくであろう法人組織運営の制 度デザイン作業において、法人化の主旨や精神がないがしろにされないために必要な点を述
べてみたい。
(1)大学ごとに法人化 → 大学の自主性・自立性を十分に確保
(2)民間的発想の経営手法 → 機動的・戦略的な組織・財務運営
(3)「役員会」制の導入 → 学長中心のトップマネージメントの実現
(4)学外者の役員等への参画 → 開かれた大学運営
こうした理念を制度上担保するのは、次期通常国会に提出される
国立大学法人法案である。本稿が掲載される時点においては、既に法案の詳細まで、内部的には固まっていると考えられるが、その後の国会審議などでも、次の
諸点については十分議論されるべきである。
しかし、実はこのどちらになるのかは重大な問題である。既に法
人化された他の独立行政法人の場合、通則法とは別に個別組織の設置法が制定されており、それ ぞれの組織のミッションが規定されている。このことによって、他の独立行政法人の政策的
意義付 けやミッションに変化がなくても、ある独立行政法人は、環境 の変化にともなって、(所管官庁が国会に法案を提出することによって)自己の
ミッションを変化・展開させていくことが可能となる。
行政の常識からすれば、国立大学のミッションは大学によって異
なることはないという考え方が支配的であろうし、各大学ご
とに設置法を制定するべく、90本 以上の法案を一国会で審議・成立させることは実際上困難であることから、全ての(統合・
再編後の)国立大学が、一律的なミッションとともに、一本の国立大 学法人法案の中に規定されることが予想される。しかし、これでは大学の多様
化・個性化という、ここ最近の大学改革の方向性に逆行しはしないか。今後、国か らの研究資金に占める競争的資金の割合(現在8%)が増大していく中で、研究 重点大学と教育重点大学(注5)の種別化が生じたり、グロー
バルな競争に参加する大学が出てくる一方で、地域との連携を強める大学も数を増すといったことが起こってくる。
こうした大学の本格的な多様化は、単に国立大学法人法案で規定
される中期計画の差別化のみで実現できるわけではなく、自己のミッションを他の大学と差別化 することを法的に明確にしながら、民営化を含め、経営体としての意思決定やガ
バナンスの仕組みに各大学が工夫を凝らしたり、設置形態や国境を越えた連携を も模索することによって、現実のものとなっていく。大学側の自己責任による選
択を制度的に保証するのは、各大学個別の設置法であるといっても過言ではな い。大学の戦略企画を担当し、野心的な試みを志向する実務家にとってみれば、自大学の戦
略の大胆さが、国立大学全体の枠組みに影響を及ぼすかどうかまで顧 慮しなければならないとなれば、発想の自由度は狭まることになろう。
つまるところ、全ての国立大学を1つの枠組みの中に押し込めるこ
とになれば、その枠組みの中で横並びに安住する国立大学側の思考停止を生み出し、自由な経 営展開を阻むばかりか、改革したはずがまたもや護送船団方式の依存体質を生み出してしま
うことになりかねない。国立大学法人法案一本か個別設置法案を国会 提出するかは、単に法技術的問題ではない。仮に国立大学法人法案一本でいくと
すれば、上記のような点について、どのような考慮が払われたかを明らかにして おく必要がある。
それから3年を経て、大学の内部組織については、今次臨時国会に、「学問分野を大きく変更しない学
部・学科の設置」に関して認可制を届出制にする法案が提 出されることになった。だが、これは基本的には私立大学に対する規制緩和に主
眼があるととらえるべきであり、国立大学の学部・学科については、国立大学が 現行法制のように文部科学省の一組織として位置づけられているかぎり、その設
置・改廃が大学の自由であるとはいえない。今後、法人化に向けて、弾力化され るのではないかとの期待もあったが、調査検討会議の最終報告にあるように、大学組織の基
本的 な単位である学部などについては、法令(省令)で制定される見 込みである。
内部組織をどう構成するかは、その組織が外部に対してコミット
するミッションを、最も効率的・効果的に遂行するという観点から検討されるべきである。民間 経営体にとって、内部組織構成の決定は、経営資源をどのような事業部組織に投
資・分配すれば、株主に対してコミットした利益を上げることができるかという 最も根源的な経営意思決定の1つである。学部の構成も、大学
の教育研究組織の基本的な単位であるからこそ、法人化すれば外部者となる文部科学省の意思が依 然として大きな影響力をもつことになる法令の形ではなく、大学側に権限を全て
委譲すべきであったと考えられる。
別の言い方をすれば、学部が法令によって規定されるという含意
は、もし学部運営に問題があり、教育研究力が落ち込んで、廃止されることが適当であると判断 される状態に陥った場合、その状態を改善すべき責任が誰に帰属するのかが不明
確になるということである。外部評価やアクレディテーション制度が存在しな かったこれまでの国立大学であれば、そうした事態に陥っても当該学部が存続の
危機に瀕するということはなかったであろうが、大学の業績が予算や処遇に反映 される法人制度においては、経営判断としてそうした学部を廃止することを迫ら
れることになる。こうした場合、全ての経営責任を有する(はずの)学長が廃止 の決断をするのだろうか、それとも文部科学省が法令を改正するイニシアティブ
をとるのか、それとも学長の決断には何ら介入しないのか。両者間の決断の押し 付け合いを避けるためにはどうすればよいのか、調査検討会議においては、何ら
検討された形跡はない。
2.2.2.人事制度の変革
兼業・兼職については、産学連携の必要性の認知とともに、現行
の教育公務員特例法の中でも、ある程度進んできている。現在では、兼業の承認を各大学学長が 行えることになっているため、これ以上の規制緩和は望ましくはあるものの、大
学教員の人事問題の主題ではなくなりつつある。むしろ、兼業に係る人事関連規 定の運用に当たっては、今後法人化された国立大学の教員が、兼業先や兼業形態
の多様化を進める中で、例えば収入の多寡についての社会的評価や研究成果の公 共性・公開性をめぐる利益相反問題(注8)に巻き込まれるリスクが高まることは必然であり、大学ごとに兼業ガイドラインを定める
ことによって、そのリスクを教員個人に負わせないような配慮が求められる。
任期制・公募制については、人的流動性が研究者の競争意識を高
めるとともに、大学のインブリーディングによる研究の停滞を防ぎ、研究者個人に付着した研究情報の組織を越えたディストリビューションを促進する効果があ
る(注9)。 任期制・公募制を推進することについては、行政よりも大学側の抵抗感の方が強い。身分の
安定が継続的な研究に繋がるという教職員組合や、講座制のもとでの 後継者育成を継続することを欲する教員からの反対が中心である。筆者は日本全
体の研究開発システムを考えた場合、大学のみならず、独立行政法人研究所や企 業の間の、研究者の流動性を相当程度高めなければ、グローバルな研究競争に勝
ち残ることは難しいと考えているが、国立大学法人において任期制を取り入れて いく際には、特に現在雑務に忙殺されている助手にしわ寄せが行かないよう、徒
弟的な助手制度の廃止と独立した研究者たることを保証するアシスタントプロ フェッサー制導入が不可欠であると考える。 法人化に当たっての最大の人事問題は、「能力主義」(注10) の処遇体系をどう構築するかという問題である。筆者は、独立行政法人産業技術総合研究所
を設立する際、前身組織の工業技術院人事課長の職にあったが、新研 究所の人事処遇体系を検討するに当たって、最も時間をかけたのが新研究所にお
ける研究者のキャリアパスの標準モデルづくりであった。現代はもはや、研究者 がパトロンを見つけて、自分の興味ある研究課題に没頭するという時代ではな
く、研究者もある組織に属して、研究資金を競争的に獲得し、優れた成果を世に出 すことによって研究者コミュニティにおける地位を確保し、更に恵まれた研究環境を手に入
れ るという時代であり、研究者は自己のキャリアパスを常に意識しな がら、属する組織を選択している。新しく生まれる産業技術総合研究所として
は、優秀な研究者をリクルーティングするに当たって、同研究所に入所した後には その業績によって評価されることを明示し、どのようなキャリアパスを歩めるの
かということを広く公知する必要があったわけである(注11)。
また、筆者が研究部長として設計した非公務員型経済産業研究所
の処遇体系は、その前身である通商産業研究所には非常勤の研究者しか存在しなかったこともあ り、例えば年俸制の導入や積極的な専門家の中途採用、非常勤研究員制度など、
公務員型の産業技術総合研究所よりも相当自由なものとしたこともあって、優秀 な研究者を集めることに成功している。
国立大学が法人化されれば、外部評価が予算の増減に直結するこ
とになるため、優秀な研究者を巡って激しい獲得競争が生じることになる。リクルーティングに 当たっての最も有効な手段のひとつである処遇条件を自由に設定する権限が、各
大学に与えられるのは画期的な改革と言ってよい。
実績主義の処遇体系に移行するには評価システムの整備が必要条
件となるが、大学の場合、研究業績によってのみ教員の処遇に差をつけることは、厳に慎まなけ ればならない。それは、教員が行う教育機能を正当に評価することにならないからである。
今次 の大学改革論議に当たって、国立大学協会がつとに表明した独立 行政法人反対論のなかで、教育機能について触れた部分は、研究機能に関する部
分に比べて、圧倒的に少なかった。これは、日本の大学においては、依然として 研究活動が教育活動より優先度が高いとの意識が残っていることの強い証左であ
ろう。今回の処遇体系の見直しは、こうした問題を改善するよい機会であり、各 大学が自己のミッションをどう規定するかと整合的に、教員に期待する役割を的
確に表した処遇体系を構築すべきである。
ところが、こうした画期的改革を無にしてしまう危険をはらんで
いるのが、調査検討会議最終報告に記載されている国立大学法人教職員の給与モデル作成の動きである(注12)。 あまり注目されていない点だが、各大学が今後独自の給与体系を検討していく際のあくまで
参考ということであるとしても、これが大学側からの要請で盛り込ま れたとすれば、国立大学の組織運営能力の欠如の現れか、それとも競争制限的な行為である
とい わざるを得ない。各大学は、教職員組合との交渉を経て、独自の 処遇体系を自力で構築していくべきである。
第1は、自己収入のうち、学生納付金の扱いである。現在学生納付金は国立学校等特別会計の歳
入になっているが、法人化後は国立大学法人の収入となる。学生 納付金の水準の決定については、教育の機会均等の問題(全国一律低水準である
べき)と大学の自律性(評価の高い大学や学部は高水準も可能)のバランスをど うとるかという問題だが、調査検討会議最終報告では、標準価額制+大学の一定の裁量とい
う 方式が示唆されている。しかし、学生納付金による収入の分は、運 営費交付金から控除されることが必定なだけに、同制度を導入しても、一部の大
学を除いては、全国一律の低水準を志向することになろう。このことは、私立大 学との競争条件に深刻な影響をもたらすが、国立大学法人にとっても、サービス
と対価の関係を認識させにくくし、コスト意識を醸成するための障碍になる危険 性がある。国立大学法人が真剣に改革に取り組むのであれば、寄付金収入を増加
するための努力を払うとともに、学生納付金についても、学部ごとに、教育研究 水準の自己評価、卒業生の所得調査などに基づいて、その水準を検討していく努
力が期待される。
第2の問題は、運営費交付金にまつわる問題である。調査検討会議最終報告には、運営費交付金
を次の2種 類に分けている。
(1)学生数等客観的な指標に基づく各大学に共通の算定方式により算出された標準的な収入・
支出額の差額(=標準運営費交付金)。
(2)客観的な指標によることが困難な特定の教育研究施設の運営や事業の実施に当たっての所
要額(=特定運営費交付金)
独立行政法人の運営費交付金の算定ルールは複数存在するが、中
期計画の執行に必要な所要額をベースとして、中期計画期間内、毎年一定割合で増加するというルールがその基本である。それに比べれば、(1)は国立大学法人の中期計画執 行との関連性は薄く(注13)、 大学内の学科や講座数を前提とした積み上げに基づくものではないかとの印象を受ける。こ
うした考え方は、これまで大学内での機械的・固定的予算配分を許し てきたいわゆる「当たり校費」の発想から脱皮できておらず、法人化しても学内の運営費配
分 に当たって、執行部がどの程度重点的な戦略的資源配分ができるの か、大きな疑問が残る。
また、(2)については、大学側の目からみれば、通常の運営費交付金以外にも国からの予算を受け取
れる途が開かれたように見えるかもしれないが、行政側の 裁量が働く余地を作ったという意味では、両刃の剣である。当該予算で実施する
べき事業が重要であればあるほど、その計画、執行に際しての行政介入の危険を 自ら招いたことになっている。
上記2点のほかにも、学生定員の決定権の問題、競争的研究資金や受託研究費に伴う間接経費資金
の取り扱い、財投資金負債の問題など、重要な問題が山積して いるが、紙幅の関係上割愛する。いずれにしろ、平成15年に本格的に検討される予算
システムの変革に当たっては、予算実務の変更が大学の自律性にどのよう な影響を及ぼすのか、十分注視すべきである。
しかし、こうした屋上屋を重ねたような意思決定システムでは、
実際上スピーディな意思決定など到底不可能である。例えば学内予算配分のように、教学と経営 両方に関連するような重要事項を決定する必要が出てきた場合、現実に最終的な
意思決定が得られるまで、どのくらいの時間が必要か考えてみれば、その手間暇 の程度がはかりしれよう。仮に諸審議体間で意見が異なるような場合、その調整
に手間取り、予算配分が年度前半に確定しないなどということにでもなれば、研 究現場での物品調達に数ヶ月かかることが通例であるため、当該年度の実験が実
施できないといった事態まで想像できる。
ここ最近の文部科学省の大学改革政策は、教授会の権限縮小、そ
の反射としての学長のリーダーシップ強化が基本となってきた。しかし、国立大学のような総合 大学の場合、学部間の価値観や伝統の違いは、産業で言えば異なる業種間ほどの
差があり、その大組織の運営を、一人学長のcapacityに依存することは 無理がある。筆者は、国立大学法人化の議論の中で経営と教学を分離するオプションを大学
側に与えるべきだと主張してきたが、その理由は、経営と教学の一致 という組織構成概念が、経営面での権限と責任が文部科学省に属していたこれま
でと違い、一個人の能力に過度に依存する組織設計論だからである。確かに、副 学長などスタッフ機能を強めることも同時に提案されてはいるが、法人のコンセ
プトとして、トップが全ての権限と責任を有するという設計になっている限り、 スタッフはトップの物理的業務負担を軽くする効果はあっても、本質的な解決に
はならない。むしろ、経営責任をとる人物と教学の責任をとる人物を別の存在と しなければ、伝統的に尊重されてきた大学の自治や学問の自由が侵される危険性
をはらんでいることに留意しなければならない(注14)。
経営と教学を一致させることで組織設計が進む場合、上記のよう
な問題を回避するためには、学部長(研究科長)に対して、相当の権限委譲をすることが必要と なる。そもそも、大学間競争は、実は学問・研究分野を一にする学部間の競争で
あることが自然であり、今次大学の再編・統合の機軸も、本来学部という単位を 念頭に置いたものでなくてはならない。現在の再編・統合案のほとんどは、同一
県内の医科大学と県庁所在地に存在する国立大学の統合である。確かに医工学の 融合を図るという名目はあるかもしれないが、単に総合大学とすることによっ
て、学生の募集を有利にするといった目的で行われるならば、再編・統合の効果は 限定的なものになるだろう。
最後に事務局の問題に触れておきたい。事務局は、これまで法令
に基づく事務処理を的確にこなすことがその任務であった。しかし、これから大学間競争がグ ローバル化していくに当たって、国際展開、産学官連携、学生確保、競争的資
金・寄付金の獲得、卒業生の組織化など、新たな機能をもつことが期待される。そ のための人材確保や能力開発プログラムの策定に取り組んでいる大学は、現在ど
の程度あるのだろうか。学長が事務局職員に対する人事権限や組織編成権をもつ ことになるが、事務局幹部職員に対する文部科学省の人事権が、それに伴って、
どう整理されるかが重要なポイントとなる。筆者は、新たに独立行政法人大学事 務管理機構のような組織を作り、現在の大学事務局職員を一括してそちらに転籍
させ、その機構から各大学に出向させることによって、上の問題を解決できるの ではないかと思うのだがどうだろうか。各大学は、その機構からの出向者と独自
のリクルート対象者を競争的に採用することによって、最適な人材配置が実現で きる。また同機構についても、競争にさらされる職員の能力開発について真剣に
取り組まざるを得ない状況を作り出すことができる。
3.おわりに
本稿では、国立大学の法人化に向
けて、これまで調査検討会議などで検討されてきたことを踏まえつつ、残された論 点や表に出てこなかった問題について考察を加えた。筆者の議論は相当controversialなも のであろうが、法人化といった大変革は50年に一度あ るかないかというマグニチュードをもつものであり、この契機に真の大学改革と高等教育行
政 の転換が実現することに対する期待から出たものである。
実際に作業に当たられる実務担当教職員の方々は、筆者も遭遇し
たような現実的な制約のなかで、様々な妥協を強いられるだろう。しかしながら、その妥協が理想・理念の本質を曲げない範囲のものであることを期待してい
る。
―――注―――
注1)唯一、文部科学省の強力なリーダーシップで行われた改革は、米国式モデルを導入しよう
とした筑波大学の設立である。
注2)清華大学を中心とする中関村の産学連携の目覚ましい発展は有名である。詳しくは、独立
行政法人経済産業研究所のホームページに掲載されている角南篤のコラム参照。
注3)青木昌彦・澤昭裕・大東道郎・「通産研究レビュー」編集委員会編著『大学改革 課題と争点』東洋経済新報社2001年第17章参照。
注4)http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0830/0830item2.pdf
注5)文部科学省は、15年度予算として「特色ある大学教育支援プログラム」選定等経費として1.2億円、選定された大学に重 点配分する予算として、140億円余りを要求している。
注6)注4に同じ。
注7)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sangyo/991203dai7.html
注8)前出「大学改革 課題と争点」第16章参照。
注9)澤昭裕「研究危機を生んだ大学の責任」論座2000年8月号参照。
注10)「能力主義」という言葉使いは、年齢を重ねるにしたがって能力も向上していくはずとい
う、現行の年功序列型給与体系の基礎になっている考え方を彷彿とさせて、誤解を招くものであるため、正確には「業績主義」と言い換えた方がよい。
注11)産業技術総合研究所のキャリアパスについては、前出「大学改革 課題と争点」第17章pp403〜pp405参照。
注12)
注13)調査検討会議最終報告には以下の記載があるが、本文の記述を裏付けるものと考えられ
る。「国は、各年度の資金交付に当たっては、原則として中期計画に記載された事業等の実施を前提とするものの、当初予見困難であった状況への対応が求めら
れることなども考えられることから、必要に応じ中期計画の変更 を行いつつ、各年度の財政状況、社会状況等を総合的に勘案し弾力的・機動的に
措置するものとする。予算措置の手法は、基本的には中期計画において計画期間中の予算額確定のためのルールを定め、各年度の予算編成においてルールの具体
的適用を図るいわゆる「ルール型」とするが、事前のルールにしたがった算定に はなじまない経費も考えられるため、そのようなケースにも適切に対応し得る手
法とする。」
注14)経営と教学の一致という結論になった背景には、経営と教学の分離が基本となっている学
校法人が設置する私立大学の運営の現状に対する否定的評価の ほかに次のような事情がある。すなわち、設置者が国、自治体、学校法人に限ら
れている学校教育法を前提とすれば、経営と教学を分離することを認めると、選択肢は学校法人しかなくなり、民営化論が出てくる懸念が払拭できないこと、ま
た設置者負担主義の原則から、国費を投入する根拠がなくなることである。しかし、放送学園は特殊法人でありながら、経営と教学は分離されており、中間的な
例がないわけではなかった。
―――参考文献―――
青木昌彦・澤昭裕・大東道郎・「通産研究レビュー」編集委員会 編著『大学改革 課題と争点』東洋経済新報社2001年
「聞いてない症候群」の
多発する現代社会 友吉 唯夫
去る5月14日、信楽高原鉄道の路線で、
悲惨な正面衝突事故が起こった。その原因は、双方の列車が対向列車の動きについて正確な情報を得ていなかったことにつきるが、社会が過密化し、複雑化する
につれて、重要な情報がしかるべき時と場所に到達しないことが多くなってくる。いずれ過失責任の所在について、「そういうことは聞いてなかった」、「知ら
されてなかった」といった調子の論争が展開されるものと思われる。
ところで、小は家族の
なかで、
大は病院、学校、官庁、企業のなかでも、「聞いてない」ことに基づくトラブルが多発しているのが現代の特徴である。このトラブルを「聞いてない症候群」と
称してもよいであろう。
夫の遅い帰宅を聞いていなかった妻が示す情緒反応、指示や依頼を忘れたり
怠ったりした時
の「そんなこと聞いてない」という非協力的対応など数多く生じているのが現状ではなかろうか。インフォームド・コンセントも医療における患者の権利である
と同時に、「聞いてない症候群」の予防につながる手順でもある。また世に根まわしといわれているものはこの症候群に対する過剰なまでの予防的行為のことで
あろう。
聞いているいないにか
かわら ず、臨機応変になすべきことはなさねばならず、「聞いてない」ことについて必要以上に相手を非難したり、
自分のなさざることの正当化へ転ずるのは感心したことではなく、言ったはずだ」「聞いてない」といい合うかわりに、改めて新しい原点から問題の解決に向か
う態度を持ちたいものである。
(91.5.17) 滋賀医大病院月報 1991年(平成3年)5月31 日
リーダー
自分で責任をとること
「権限
を最大限部下に与え、自分で
責任をとる。火達磨になる覚悟をする。それが出来なければリーダー失格」
機関補助から競争原理に農づく克援ヘシフト
財政制度等審議会が17年度予算編
成の基本的考え方建議
財政制度等審議会(貝塚啓明会長は、引き続
き歳出改革路線を堅持し、国債発行額を極力抑制するとレ」もに、財政を持続可能なものとするための制度改貰を強力に推進すべきだとする同番議会財政制度分
科会の審議報告を了承し、去る五月十七日、谷垣禎一財務大臣に「平成十七年度予算編成の基本的考え方について」 の建議を行った。 この中で、高等教育関
係予算について、教育・研究の質的向上を図るため、国立大学間や国公私立大学の競争原理に基づく支援へのシフト促進を要請した。また、国立大学への財政支
援については、厳格な事後評価により支援の重点化を図り、学生納付金標準額の水準は、受益者負担の徹底、自己収入の確保努力を踏まえて設定するとしてい
る。 建議は、来年度予算編成の基本的考え方を示すにあたつて、十六年度予算で基礎的財政収支
(プライマリーバランス)が若干の改善を見ているが、わが国の財政は、十六年度末の公債発行残高が約四百八十三兆円、公債依存度が約四四・六%と見込まれ
ると指摘。厳しい歳出改革を推進するに当たり、「財政の政策決定と執行に携わる者全てに厳しい反省と自覚を求め、十七年度予算編成に向けて、本建議が活か
されることを期待したい」としている。
その上で、当面の財政運営の考え方につい
て、金利が一%上昇した場合、国債費は一・二兆円増加し、その後も累積的に増大していくといった例を示し、十七年度予算編成においても、引き続き歳出改革
路線を堅持し、国債発行額を極力抑制するとともに、財政を持続可能なものとするための制度改革の推進を要請。財政を将来にわたつて持続可能なものとしてい
くためには、社会保障、国と地方をはじめとした諸制度について、少子高齢化
が進行しても維持可能なものとすることが重要だとし、特にこの十年、大幅に伸びている社会保障関係費及び地方交付税交付金等の抑制を求めている。
財政健全化に当たっては、制度改革と合わ
せ、歳出の量を厳しく抑制することが必要だとし、施策間のメリハリを明確にし、国として真に必要で効果の高い施策への紋込みを提言。さらに、限られた財源
の中での重点化を可能とするため、単価見直し・コスト縮減、無駄の排除など行政経費の見直しと削減を徹底して行うべきだとしている。
人件費についても極めて深刻な財政事情、民
間における厳しい情勢等を踏まえ、業務の効率化・人員配置の適正化を図るとともに、総人件費の抑制に努めるよう求め、公務員給与の在り方について、地域に
おける民間給与の実情等がより一層反映できる仕組みとなるよう見直しを行うべきだとした。
予算とその執行について、透明性及び説明責
任(アカウンダビリティ)の確保をさらに図るべきだとし、一般会計、特別会計から特殊法人、独立行政法人まで、公的部門全般を対象とする企業会計的手法を
活用した省庁別財務書類の作成・公表、予算書・決算書の表示区分の検討など、引き続き公会計の整備に努めるべきだとしている。また、「PLAN(編成)−DO (執行)…SEE (評価・検証)」 のプロセスの強化を要請している。
文教・科学技術予算のうち高等教育予算に関 する審議会の建議は−
『高等教育に対する公的支援に関し、諸外国
との比較により量的拡大が必要との議論も一部に見られるが、これについては、我が国における高等教育の位置付けや教育分野別の資源配分、受益と負担の在り
方等に関する慎重な検討が必要である。また、教育・研究の質的向上を図るには、既存の機関補助による支援策から、国立大学間、国公私を通じた競争原理に基
づく支援へのシフトを促進することが重要である。
また、平成十六年四月に法人化された国立大
学への財政支援については、各大学の自主的・自律的経営判断に基づく効率的な運営を求めつつ、客観的かつ厳格な事後評価により支援の重点化を図るととも
に、運営費交付金の算定基礎となる学生納付金標準額の水準に関しては、受益者負担の徹底、自己収入確保の努力を踏まえて設定する必要がある。
■■□
┃ 財務会計メールマガジン
第3号 □■■
1月5日の学長新年挨拶では、女性のパワー
をどう活用するか、また、昨年の流行語、養老孟司氏の「バカの壁」を引き、今までの壁をうち破ること、それが国大法人化を有効にする意味であると述べられ
ました。
法人
化で国立大学はどう変わるのか 文部科学省高等教育局専門教育課長 杉野剛
(前文部科学省高等教育局大学改革推 進室長)
国立大学のマネジメント改革
1 文部科学省の仕事が変わる
→ 縦割りの支援 から横割の支援へ
高等教育局が、それぞれの課で指導をすること はなくなる。
大学法人の窓口を一本化し、中期目標を通して 指導することになる。
財政支援が変わる
今までは 国立1兆5千億 私立3千億
これが、COEでも見られるように、国立、
私立同じ土俵で競うことになっている。教育面でも教育COEが行われた。国立だから といって安住できなくなっている。
2 評価
事前の規制から事後の評価へ 規制は取り払う
6年に一回、中期目標に照らして評価する。場合によってはお金の増減を行うことになる。
3 国立大学を民営化から防ぐには、議論は易
しい。しかし国大附属病院の民営化論を防ぐには、類似の病院、厚生労働省の国立病院や、公的病院 との差別化が説明し難い。
赤字幅は縮減すること。赤字がやむを得なけ れば、きちっと説明すること。赤字があるのが、大学病院の特性であると立
証できればいい。 中期目標と実績は国立大学法人評価委員会で 評価される。
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意識の改革
DO(指示を実行する→指示待ちになる) から PDCAサイクルへ
PDCAとは、計
画(Plan)、実行(Do)、点検・評価(Check)、改善実施(Action)の4ステップ
今までは、「国家行政機関」であるため行政法で決
まったことを行い、行政指導により指示されたことを行っておればよかった。法人化では「国が法律で設置する組織」となり行政法は適用されなくなる。また、
行政指導も原則無くなる。このため、自ら経営戦略を考えることになる。
とにかく指示を待たない。自ら考え提案しよ う。
何か、新しいことが起こると、「こんな仕
事、いったいだれがするんや」という会話が生まれます。しかし、「こんな仕事」という認識をした
のはあなたなのです。そこまで認識しておれば、まず自分でして見れ ばどうかと考えること。 自分でするのがふさわしくなければ、そこで
「誰それ」が「どのように」するのが適当と提案するのです。 また、「指示がない」から「動けない」とい
うのもよく聞きますが、「指示があれば」動けるまで理解しているのなら、「どういう指示があれば動ける」と提案するのです。 現状は、誰も解らない。も
う、だれかに聞け
ば答えが返ってくるような状態ではないのです。
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身の回りの整理を
人事異動ではないですが、不用なもの、紛ら
わしいものを整理しておきましょう。特に、独立行政法人を下敷きにした解説資料ははっきり言って不用です。捨てましょう。
「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法
人会計基準注解」報告書は平成15年3月5日の版が最新のものであり、これ以前の版は破棄してください。混乱の元となります。
また、新日本監査法人の 「よくわかる国立
大学法人会計基準」は、「国立大学法人会計基準」、「会計基準注解」、「通則法」、「個別法」 「注解に関する実務指針報告書(Q&A)」、さらに監査法
人の独自の解説資料を統合したものであり、内容が充実し、読みやすいです。
これは、今の会計法や予決令に変わるもの
の集大成であり、言ってみれば国大法人の「会計小六法」と言えるものです。
意識の改革を
国の行政機関制度の大学から、国立の法人 大学へ。
会計法があるから、行政指導、指示があるか
ら仕事をしていた、から、 自分は、何のために、誰のために仕事をしているのかをひとり一人が考えることが大事です。。
財務会計の運用調整 特に月次決算について
伝票作成、決裁処理など、スタートしたも
のの様々な問題点が浮かび上 がっています。運用について緊急に調整する必要があります。
また、当面の開始貸借対照表の作成、月次 決算は重大な問題になってきます。
・・・開始貸借対照表・・・
初めて複式簿記を始める場合、期首(4月1
日)時点での財産状態を明確にします。従って、資産、負債の各勘定科目の帳簿価額を算出します。
・・・決算・・・
決算については、パワーポイントファイル
「国立大学法人における決算業務」 を参考にしてください。
・月次決算
月初めから半ば・・前月分の未払計上、 月次残高試算表の作成。
月末に役員に報告。計算証明規則により 会計検査院に提出。
・・・これが毎月。
・年次決算・・・財務諸表の作成。
期末決算整理、公表用財務諸表の作成。
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月次決算について
「国等の組織に対する計算証明」
会計検査院長より各大学に対し、「国立大学法人の計算証明に関する指
定」がなされました。
同 添付書類
同 証拠書類
中期計画等 ・・・中期計画の最初の事業年度開始後一ヶ月以内
財務諸表及びその添付書類 ・・・当該事業年度経過後三ヶ月以内
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今までの計算証明規則による、国の会計機関(支出負担行為担当官、支出官、歳入徴収官等)に対する計算証明でなく、
国が資本金の2分の1以上を出資している法人の会計 に対して、計算証明規則第69条により会計検査院が別に
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法人化はこれからが始まり・・先
送りされた
課題の検討
京大は4
月1日に法人化されるが、法人化のプロセスはこれで終わりではなく実はこれからが始まりである。何故か?それは、一つには、少なからぬ課題が法人
化後の検討、実施に持ち越されたからである。例えば、教員人事制度のあり方とりわけ教員の業績評価の導入、任期制の拡大、兼業・兼職規制の見直し等の課
題、事務職員などの全学的な再配置と事務組織の見直し・再編成という課題、「全学支援機構」と総称される部局横断的なバーチャルな組織の設置(労働・安全
衛生、情報基盤、国際交流など)といった課題である。
これらの課題は、検討のための十分な時間がないからという理由で先送りになっているが、法人化後担当理事を決めて引き続き検討を進めていかなければなら
ない。特に教員の人事制度改革は、今般の非公務員化とセットになった法人化の狙いの最大のものの一つであり、より流動性の高い、適切な評価システムに基づ
いた競争原理の導入をめざす必要がある。
組織、制度をいかに運用するかが重要
法人化の本番が法人化後に来るという第二の理由は、法人を支える運営組織、体制は形だけ、いわば紙の上でできただけであり、これがうまく機能するかどうか
は理事や部課長、事務長などのマネジメント・スタッフの度量と幅広い関係者の理解と協力にかかっているからである。別の言い方をすればこのような組織、体
制が適切に機能し、所期の成果を挙げられるかどうかは、その組織、体制の運用に関わる人々の意識に大きくかかっているからである。とりわけ京大の場合は、 法定の経営協議会(24
名)、教育研究評議会(67名)に加えて従来の部局長会議を残した上でメンバーを拡大し、さらに部局長会議の下に新たに「研究科長
部会」を設けることになっている。現在の総長補佐会、部局長会議、評議会という意思決定プロセスと比べるとよほど複雑かつ時間のかかるプロセスになるので
ある。従って、これら多くの会議体の機能、役割をよく考えて運用していかないと会議ばかりが「踊って」結局意味のあることは何も決まらず、物事を決めるの
にこれまでより多くの時間とエネルギーがかかることになりかねない。
さらに、京大では入試や国際交流などに関する全学委 員会と呼ばれる会議体が60
を超えており、そのあり方が問題になる。目下既存の全学委員会の見直しを行われており、役割を終えたいくつかの委員会は廃止さ
れる見込みであるが、新たに設置される財務委員会のようなものもあり、全体の数としては大きくは減らないであろう。となると、これらの委員会をより効率
的、効果的に運営することが重要になる。そして会議に参加する部局長や一般教員の貴重な時間を少しでも本来の役割である教育・研究・医療に振り向けられる
ようにするとともに、準備に当たる職員の仕事を減らさなければならない。まず各委員会の役割を、合意形成のための調整を行うためのものか、ある課題につい
ての解決策の企画が目的か、何らかの決定を行うためのものか整理しなければならない。その上で、必要に応じて委員会のメンバーの数を減らすこと、会議の頻
度・回数を減らすこと、会議そのものの時間を減らすことを検討しなければならない。
いずれにしても、全学委員会には企画 委員会や専門委員会、WG
など様々な名前で副次的な会議体が設けられるのが常であり、全学に60の委員会があるとすれば、専門委員会などを含めて実際には
200ほどの会議が動いていることになる。各部局(学部・研究科15,研究所13、病院、図書館など合計30ほど)にはほぼ同じ数の委員会があると考えら
れるので、全学では約2千もの委員会が存在することになる。2千の委員会が年に2回会議を開くと年間で延べ4千回の会議が行われることになり、それぞれの
会議に10名の教員と事務職員が各2時間参加するとすると、全体で実に8万時間・人という膨大な時間と労力が会議に費やされていることになる。
それでもこうした会議が実質的な討議、意見交換が行われ、大学の運営に関わることや教育・研究・医療の方向について実りある決定が行われているのなら意
味があるが、現状は必ずしもそうとは言いがたい。むしろ、あまり意味のない資料説明や議事録の確認や資料よく読んでくればすぐ分かることを質問したり、総
論的な自説を長々と披瀝したりということに費やされている場合が多い。会議の時間管理も甘い。私が身を置いた霞ヶ関の会議も民間企業の会議も、「時間は有
限の資源」という考えが徹底しており、大学のように会議を開く際、始まりの時間だけを明示して終わりの時間を示さないというようなことはありえない。どん
な会議にしろ、どのような議題をどの位の時間で議論をし、結論をまとめるかを予め考え、時間設定・時間管理を行うのが常識である。今後、委員会の数を減
せないとなると、会議自体を効率的に進めるしか手はない。
効率的・効果的な会議運営は委員長・委員・担当部課の共同責任
そのためには、会議招集者が会議の目的を明確に設定し、落としどころを見定めて会議の運営を行う必要があるし、これを支える担当部課も事務レベルで決定で
きる範囲のことは結論を出した上でグレー・ソーンに属することのみ限定的に会議に諮り、資料を準備することが必要であるし、会議に参加する教職員も細部に
こだわるのではなく本質的な部分について意見を述べるようにするとともに、効率的かつスピーディな会議運営に協力するようにしなければならない。議事録も
可能な限り簡略にし、資料もできるだけ早めに電子媒体を利用して配布し、可能であればメールで意見をもらった上で電子的に承認を得る、というような合理化
を行う必要がある。教職員の時間給が平均2千円とすると、委員10名が2時間会議に参加し、5名の職員が4〜5時
間かけて資料を準備し、議事録をつくると
すると、1回の会議の直接のコストは約10万円、年間4千回の会議を開くだけで4億円(!)のコストが必要ということになる。これに教授会や役員会や経営
協議会、教育研究評議会を加えれば、いかに多くの時間とコストが会議に使われているか想像がつくであろう。
これまで、教員の労働条件は人
事院規則で定められていた。医師は宿直手当などはあったが、長時間勤務しても研究の一環と見なされ、手当はつかなかった。法人化に伴い、労働基準法で定め
られることになり、大学は医師を含めた教員に超勤手当の発生しない裁量労働制を適用することにした。
しかし、厚生労働省は昨年10月、「急患などがある医師
は、勤務時間を裁量で決められない」として、医師には裁量労働制を適用しないよう都道府県の労働局長あてに通達を出した。
国立大学を所管する文部科学省
は、人件費の急増を警戒する各大学の要請を受けて厚労省と折衝したが、物別れに終わった。この結果、大学は医師への超勤手当を支払わなければならなくなっ
た。
各大学は文科省から渡され、人
件費などにあてられる運営費交付金と、学費収入や寄付金などの自主財源で経営している。関西のある大学によると、超過勤務は文科省の想定を大きく上回っ
た。文科省が超勤手当と見込んだ予算額は、必要額の3割程度しかなかったという。
九州大は交代勤務を徹底するこ
とで人件費を削っているが、4〜6月の3カ月間で推計3千万円の超勤手当が発生した。年間の支出額が不透明であることなどから、手当の支払いを
見合わせている。一方で、福岡東労働基準監督署は6月下旬から、同大医学部付属病院へ監督指導に入っている。
京都大、大阪大は超勤手当が年
間「数億円」、東北大は「1億円程度」にのぼる見込みだという。京都大は医師の宿直手当を減らし、超勤手当を工面し
ている。
付属病院を抱える国立大は全国に42あり、多くの大学が超勤手当の工面の必要に迫られているとみられる。
( 裁量労働制 研究開発など業務の性質上、使用者が仕事の進め方や時間配分を具体的に
指
示せず、働く人の裁量にゆだねる制度。実際に働いた時間にかかわらず、労使の交渉で決めた時間だけ働いたとみなされる。03年10月の厚労省の通達で国立大の
教授、助教授、講師も適用対象になったが、医師は適用除外とされた。)
CSの立場から、学生育成について考える。
医師は、患者を物のように扱う
とか、人間味に欠けるとかいった批判をよく耳にしますが、そうしたことの一端を垣間見た気がしました。
人間教育の基本は掃除ではない
かと思います。逆に、掃除ができない人は何をやっても駄目だと言う人さえいます。「自分たちが学ぶ場所は自分たちで整える」という理念のもと、学生たちに
構内の掃除をさせ、自らの手で勉学に励める環境づくりをさせるべきではないでしょうか。
医師という肩書を与える前に、常識ある社会人教育をせぬ限り、この大学から、患者に信頼
される医師の輩出は難しいのでは、と思いました。
旭川医科大学長 八竹 直
年末12月25日の日経新聞に国立大学協会で法人化の陣頭指揮をとり11月末に退任された石 弘光 前一橋大学長が国立大学法人化後9ヵ月経過した時点での問題点を論評されていました。うまく纏められていますので、かいつまんでご紹介いたします。
問題点を4つに整理されています。
第一には学長がリーダーシップを発揮しうる状況になっているかどうか。法人化後どこの大学でも制度的に学長は、それなりに組織を掌握する体制にはなって
いる。しかし問題は、定員管理と教員配置、ならびに資金の配分をどれだけ法人本部に集中させ、大学全体の方針から効率的に運用できる仕組みになったかが問
題である。法人化後、大学が戦略的に動くためにはヒトとカネの集中管理が不可欠である。
第二に、学外者に大学運営へどれだけ実質的に参加してもらうかが問題点。正直言って、まだまだ学外者の参加を極力形式的なものに留めておきたいという潜在的な願望が大学内にあるのは事実であろう。
第三に、如何にして大学職員の専門性を高め、大学運営に主体的に参加させうるかである。今般の法人化にあたり、新たな役割がもっとも期待されているのが
職員といえよう。大学職員はこれまで研究教育のサポート役であったが、今後は大学経営の領域で専門家として正面にでてもらわねばならない。将来、生え抜き
の職員からその大学を背負う人材が出て、副学長や理事として積極的に責任を果たすことが期待される。しかし現段階において、まだこのような自覚もなく従来
と同じようにただ漫然と日常業務を行っている職員が多い。
第四に、将来を見据えた財政基盤作りが各大学とも重要な課題となる。国から支給される運営交付金に毎年、マイナス1%の効率化係数がかかり自動的に削減
される仕組みが導入された。これを埋め合わせるだけの競争的資金が保障されているわけではない。となると外部資金による大学独自の基金を創設し、大学の長
期戦略に役立てねばなるまい。この点は、現時点においては、いずれの大学もまだ構想の段階であろう。
以上四点に問題点をまとめたが、いずれも法人化後の課題として実現せねばならぬものである。中期目標・計画の第一期が終わる2010年までに、大学間の
競争の勝負はついていることだろう。法人化の狙い通りの体制を如何に迅速に整え、他大学より一歩でも先んじ、効率的な運営が出来る大学のみが競争に生き残
り、今後さらに発展することになると思われる。
と書かれています。
わが旭川医科大学も効率的な運営と工夫により、2010年にも競争に生き残って、地域医療に貢献出来る大学となっていなければなりません。
それでは2005年、教職員一同で今までとは違った感覚・意識、すなわちこの大学、この職場を一新する気概をもってスタートしようではありませんか。
年初から、いよいよ外来棟改修も始まります。現実は厳しいですが、暗くならず、明るく、元気をだして皆さんと共にがんばりたいと思います。よろしくお願いします。
【平成17年1月4日 旭川医科大学新年交礼会にて】
国立大学が法人化されて九カ月が過ぎた。法人化の陣頭指揮をとり十一月末に退任した石弘光前一橋大学長は、六年後には大学間競争の勝負はつくと予想する。
二〇〇四年四月に、すべての国 立大学が法人化された。今般の国立大学法人化は、明治初めと戦後すぐの学制の大改革に匹敵するもので、大学改革史上非常に重要な変革と位置づけられよう。 それだけに法人化が当初の基本理念あるいは目標に沿って、その成果が挙げられているのか国民的な関心となっている。
国立大学を法人化する動きは、 大学改革の流れの中で始まったものである。一九九一年の「大学設置基準の大綱化」以来、各大学も改革に乗り出し、教義部の改組、カリキュラムの変更、シラ バスの作成、セメスター別の導入など、その内部努力によりある程度の成果を挙げたといえる。
内部改革に限界
しかしながら旧襲依然たる大学人の意識の下、既存システムの維持に固執する限り内部改革の限界は早くから予想されるものであった。
講座制や教授会自治で守られて いる大学の非効率的な組織、護送船団方式による文部科学者の統制、親方日の丸的な発想による非競争な研究教育の実態など、国立大学に対し社会一般からの批 判が多く集中していた。そこで次第に、国立大学の設置形態の改組まで含めた本格的な改革が避けられない状況になってきたといえる。
法人化前まで、国立大学は単に 政府に付属する一組織という位置づけであった。かかる状況の下では、先に触れたような主体性のない大学運営は起こるべくして起こったという面がある。そこ で国立大学に独立した法人格を与え、大学の自主・自律性を重んじ、自己責任のもとで大学を運営させようという発想が出てきた。
しかし国立大学の設置形態の改組は、政府の行政改革の動きとも絡むうえ、当事者である国立大学や国立大学協会、そして文部科学者、政治家の間でも、様々な思惑も飛び交った。試行錯誤の議論の上、やっと今日のような姿の法人化にこぎつけたというのが実態である。
このような経過を経た後だけ に、改めて法人化の現状を検証する必要がある。導入後九カ月たち、個人的には、法人化への移行は表面的には予想以上に円滑に進行していると思っている。し かしながらいったん、進行中の法人化の中身に立ち入ると様々な問題が生じていることが分かる。
法人化の4問題
何が問題かを、以下四点に整理しておこう。
第一に、法人化の当初の狙い通 りに学長がリーダーシップを発揮しうる状況になっているかである。法人化後、どこの大学でも制度的に学長は、それなりに組織を掌握する体制にはなっている と思う。問題は、定員管理と教員配置、ならびに資金の配分をどれだけ法人本部に集中させ、大学全体の方針から効率的に運用できる仕組みになったかである。
各学部の空きポストの一部を本 部に提供させ、また外部資金や教員の兼業・兼職の収入の一部を間接費として徴収するなどの試みを、各大学で始めているが、教授会の権限を維持したい雰囲気 の中で必ずしも成功していないようだ。法人化後、大学が戦略的に動くためにはヒトとカネの集中管理が不可欠である。
第二に、学外者に大学運営へどれだけ実質的に参加してもらうかである。
現在、役員会の理事、監事そし て経営協議会の委員として、数多くの学外者が大学運営に参加している。しかし学外者の目から見ると、法人化後も変化を好まぬ大学人の意識、文部科学者に対 する従属意識、国大協の中での序列意識など、従来の慣行から脱却できていないとの批判も多い。
正直言って、まだまだ学外者の参加を極力形式的なものに留めておきたいという潜在的な願望が大学内にあるのは事実であろう。これが顕在化しているのが、法人化後の学長選出の際に形骸化した学長選考会議の取り扱いに出ていると思う。
第三に、如何にして大学職員の専門性を高め、大学運営に主体的に参加させうるかである。
今般の法人化にあたり、新たな 役割がもっとも期待されているのが職員といえよう。大学職員はこれまで研究教育のサポート役であったが、今後は大学経営の領域で専門家として正面にでても らわねばならない。将来、生え抜きの職員からその大学を背負う人材が出て、副学長や理事として積極的に責任を果たすことが期待される。
しかし現段階において、まだこのような自覚もなく従来と同じようにただ漫然と日常業務を行っている職員が多い。
財政基盤も課題
第四に、将来を見据えた財政基 盤作りが各大学とも重要な課題となる。国から支給される運営交付金に毎年、マイナス一%の効率化係数がかかり自動的に削減される仕組みが導入された。これ を埋め合わせるだけの競争的資金が保障されているわけではないし、また施設費の獲得も非常に厳しい状況にある。
となると外部資金による大学独自の基金を創設し、大学の長期戦略に役立てねばなるまい。この点は、私学の経験が参考になろうが現時点においては、いずれの大学もまだ構想の段階であろう。
以上四点に問題点をまとめた が、いずれも法人化後の課題として実現せねばならぬものである。しかし「日暮れて道遠し」の感もある。中期目標・計画の第一期が終わる二〇一〇年までに、 大学間の競争の勝負はついていることだろう。法人化の狙い通りの体制を如何に迅速に整え、他大学より一歩でも先んじ効率的な運営が出来る大学のみが、競争 に生き残り、今後さらに発展することになると思われる。